日本における「スクリューフレーション」の実態
ここまで、スクリューフレーションは「中低所得者層への締め付け」と説明してきました。事実、欧米ではスクリューフレーションによって、中低所得者層がますます貧しくなる一方、富裕層は豊かになり、格差が広がっている国もあります。
対して日本の場合は、「みんなが貧しくなっている」ことが家計調査を見るとわかります。
二人以上の世帯を年収階層別に区分けし、区分けの最下位である「年収200万円未満」と、最上位である「年収1,500万円以上」が、それぞれ全体の何%を占めるかを表したのがこのグラフです。
たしかに、「年収200万円未満」の世帯の割合は増加傾向にあります。しかし同時に、日本では「年収1500万円以上」の世帯の割合が減っているのです。
海外では貧しい人はより貧しく、裕福な人はより裕福になることで格差が広がっていたわけですが、日本の場合はみんなが貧しくなっている。つまり日本は「格差社会」ではなく、「総貧困化」に向かっているわけです。
なぜこんなことになっているかと言えば、日本が経済成長していないからです。
海外で所得格差が広がっているのは、新しい産業や経済成長の恩恵がうまく分配されず、富裕層に富が集まりやすくなってしまうためです。だからこそ、生活必需品の値段が上がるスクリューフレーションは「中低所得者層への締め付け」と言われます。
しかし日本では、大きな富を生み出す新しい産業が生まれるわけでもなく、長期停滞で賃金も上がらず、「みんなが締め付けられている」状態です。
永濱 利廣
第一生命経済研究所
首席エコノミスト
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