市場は「ドルを売る理由」を探している?
以上を整理すると、金融市場では、米インフレ指標よりも景気指標が注目されています。加えて、景気指標の「弱い結果」に過敏に反応するようになっています。
その背景にあるのは、テクニカルな理由です。米金利、たとえば10年債利回りが5%まで上昇した動きは、90日MA(移動平均線)を2割近く上回るもので、それは経験的には短期的な「上がり過ぎ」懸念が強いことを示すものでした(図表2参照)。
そして、そんな短期的な「上がり過ぎ」の修正は、経験的には短期的にも90日MAを5~10%を下回るまで金利低下が続くというものなので、その意味では米10年債利回りはさらに4%を目指し低下する可能性があり、だからこそ米景気の減速を示す結果に反応しやすかったということではないでしょうか。
そして金曜日、米ドル/円はこのところサポートされてきた150円を割ると、一時は149円割れ近くまで比較的大きく下落しました。
この日は、特段注目される米ドル売り材料はありませんでした。にもかかわらず、米ドルが比較的大きく下落した理由については、米感謝祭の休日を控え、米ドル買いポジションの調整が入り易かったからでしょう。
確かに一部のデータを見ると、先週までの米ドル買い・円売りは、少なくとも2022年以降では最大に拡大していました(図表3参照)。
このポジションを手仕舞う動きが強まった。つまり、米ドル売り・円買いが増えたことで、米ドルの下落が拡大したと考えられます。
今週の注目点…「米ドル下落」は拡大するか!?
以上見てきた、米金利が更に下がる可能性があるということ、そして年末が近付くなかで、米ドル買い・円売りに大きく傾斜したポジションの損益確定が増える可能性があることは、米ドルの上値を抑制し、下落を後押しするでしょう。
そういったことを踏まえると、今週の米ドル/円は上値が抑制され、下落リスクを意識する必要があるのではないでしょうか。今週の米ドル/円の予想レンジは148~151円中心で想定したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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