税務調査で「経費として認められるもの」「認められないもの」
経費とは、事業活動を行う上で必要となった費用のことです。個人事業主の場合、所得税額は売上額から経費を差し引くと算出できます。事業で必要になった支出をしっかりと経費に計上すれば、それだけ所得を圧縮できるため、節税には効果的です。
しかしながら、個人事業主の中には、所得を低く見せかけるために経費を水増しして計上する例も少なくありません。そのため、税務調査では経費の内容を詳しくチェックされることが多いのです。
税務調査において経費として認められる支出と否認されることの多い支出についてご紹介します。
<経費として認められるもの>
税務調査で経費として認められる勘定科目は次のようなものです。
●人件費
⇒従業員に支払う給与は人件費となります。
●消耗品費
⇒コピー用紙や文房具など、10万円未満の事務用品などは消耗品費として計上可能です。また、キャビネットやデスクなども10万円未満であれば消耗品費として扱えます。
●接待交際費
⇒事業に関係する交際に伴う飲食代、取引先の冠婚葬祭の際などに渡す祝い金や香典などは、接待交際費として計上可能です。
●旅費交通費
⇒営業活動や出張にかかった飛行機代や電車代などは、旅費交通費となります。
●研究開発費
⇒新サービスや新商品開発のために参加したセミナー受講費などは、研究開発費として計上可能です。
●広告宣伝費
⇒商品やサービスを宣伝するためにかかった費用は、広告宣伝費となります。パンフレットの作成なども広告宣伝費に該当します。
●図書教育費
⇒事業に必要な知識を学ぶために必要となった書籍や新聞などの購入費用は、図書教育費として計上可能です。
●通信費
⇒事業のために使用した電話代やインターネット通信料などは、通信費となります。切手やはがきなども通信費に含まれます。
●地代家賃
⇒オフィスの家賃、駐車場代などは、地代家賃として経費に計上可能です。
●減価償却費
⇒不動産や車、パソコンなど、事業のために購入した資産は、法律で定められた法定耐用年数に応じて分割し、減価償却費として計上します。
●福利厚生費
⇒社員旅行や忘年会等、従業員の福利厚生に使用した費用は福利厚生費として計上可能です。
●支払手数料
⇒事業上必要になった金融機関の振込手数料や税理士・弁護士などへの報酬などは、支払手数料として計上します。
●租税公課
⇒印紙税や登録免許税、固定資産税、事業税などは租税公課として経費計上が可能です。
<税務調査で経費として認められない支出>
次のような支出は、経費としては認められません。
●プライベートの支出
・家族との旅行代
・友人との飲食代
・個人的に参加したゴルフコンペの参加費
・事業に関連性のない雑誌の購入代
・プライベートで使用している携帯電話の料金
など、事業には関連性がなく、プライベートで必要となった支出は経費にはなりません。
●経費計上できない税金
・所得税、住民税、相続税、贈与税
など、税金でも経費に計上できないものがあります。
税務調査でチェックされやすい「グレーゾーン」の支出
税務調査で経費として認められる支出とは、事業のために必要となった支出です。しかしながら、経費にはグレーゾーンと呼ばれる部分があります。税務調査では、税務上の解釈によって経費として認められるケースと経費として認められないケースがあるのです。税務調査で指摘を受けやすい経費の具体例をご紹介しましょう。
■事業用の車の購入費や維持費、ガソリン代などの経費
プライベートで使用している車とは分け、事業用に使う車として利用記録が残されていれば経費として計上が可能です。しかし、事業用車両としての利用実態が証明できなければ、購入費用はもちろん、維持費なども経費として計上することはできません。
■取引先との個人的な会食
新規取引先を招待して開いた会食などの費用は経費として計上可能です。しかしながら、取引先の相手であっても、個人的な付き合いで食事をした場合などの費用は、経費としては認められません。
■事業の出張と兼ねて観光もした場合
事業の出張と兼ねて、プライベートで観光もした場合は、事業に直接かかわっていた費用に関しては経費として計上できますが、全額を経費として計上することはできません。また、家族に購入したお土産代なども経費として扱うことは認められませんが、従業員のために購入した場合は福利厚生費として計上が可能です。
■プライベートでも使用できる消耗品
事業で使用すると言っても、スーツはプライベートでも使用が可能です。そのため、スーツ代は経費としては認められません。同様に、仕事で使用するバッグ、仕事で使用する腕時計、仕事で使用する革靴なども、プライベートでも使用ができるため、費用として計上することは難しい可能性が高くなります。
税務調査で経費が否認されたときはどうなる?
税務調査では、帳簿や書類などを細かくチェックされます。もし、税務調査で経費として計上していた費用を否認された場合は、否認された分の税金と確定申告の額が小さかったことに対するペナルティである過少申告加算税、納付が遅れたことの延滞税などが課税されます。
■過少申告加算税とは…
過少申告加算税は、確定申告をする際に正しい納税額よりも少なく申告したことに対して課せられる税金です。過少申告加算税の額は、本来納付すべき税額との差分の10%にあたる額となります。ただし、税額の差分が50万円以上になる場合は、50万円を超える部分については15%の割合で課税されます。
■延滞税とは…
納付が遅れたことに対して科せられるペナルティが延滞税です。税務調査の指摘により、追徴課税が行われた場合は、延滞税も納めなければなりません。令和3年1月1日以後の割合は、納付期限の翌月から2ヵ月までの期間は2.4%、納付期限の翌日から2ヵ月を経過する日の翌日以降からは8.7%となっています。
■悪質な場合は「重加算税」も課される
税務調査時にプライベートの支出を経費として計上していただけでなく、不都合な書類を隠蔽するなど、悪質性が高く、脱税と判断されるような行為を行った場合は、過少申告加算税に代えて重加算税が加算されます。重加算税の税率は、最も重い35%です。
経費が認められるか不安な場合は税理士に相談
税務調査は、ほとんどの場合、税務署から事前通知が行われます。そのため、現金商売等をしているケースを除き、急に税務調査が開始されるケースはほとんどありません。事前通知にて指定された日時に税務調査官が現場を訪れ、調査が行われることとなります。
もし、税務調査の通知を受けたけれど、グレーゾーンの経費があり、認められるかどうか不安があるという場合は、税理士に相談してみることをおすすめします。グレーゾーンの経費とは、解釈の違いによって、経費として認められるケースもあれば、認められないケースもあるということです。前述のように、経費として認められなければ追徴課税が行われ、納税負担が増えてしまいます。しかし、税の専門家である税理士であれば、税務調査時に納税者側の主張を調査官に伝えることができ、グレーゾーンの支出であっても経費であることを的確に主張することができる場合もあります。
税務調査の連絡を受け、経費に不安を感じているようであれば、ぜひ早めに税理士に相談し、税務調査の立ち会いを依頼するとよいでしょう。現場に税理士が立ち会うだけで精神的な負担も緩和されるはずです。
松本 崇宏
税理士法人松本 代表税理士
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本
税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。
\「税務調査」関連セミナー/
相続税申告後、約1割の人が「税務調査」を経験?!
“申告漏れ”を指摘されないためのポイント>>11/19開催