(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの影響を特に大きく受けた業者は、事業の継続を下支えし、事業全般に広く使える給付金「持続化給付金」を申請できます。一方で、持続化給付金詐欺やコロナ給付金詐欺とも呼ばれる不正受給が相次いで発覚しています。要件を満たさないにもかかわらず受給してしまった方は早めに自主返還しましょう。もし誤って受給したままでいると、どんなペナルティが課されるのか。松本崇宏氏(税理士法人松本 代表税理士)が解説します。

持続化給付金の不正受給は「後悔」を招く

 

持続化給付金の不正受給の発覚が後を絶ちません。

 

ネットで「持続化給付金 不正受給」と検索するといろいろな情報が出てきますが、経済産業省のサイトでは不正受給者が公表されていて、氏名がばっちり出てしまうことをご存じでしょうか。

 

契約を結ぶ際や、会社で働いたり取引を始めたりする際、リーガルチェックとして名前が検索されますが、不正受給者リストに載れば容易に引っかかってしまいます。また、ネットに載るということは半永久的に残り続ける可能性もあり、一時の損失では済まないかもしれません。

 

給付金系の詐欺は今も多く続いていて、これからもたくさんの不正受給が発覚するのではないかと思います。国は本気で追ってきます。持続化給付金だけではなく他の給付金も含め、要件を満たさないにもかかわらず受給してしまった方は早めに自主返還しましょう。そのほうが傷は浅くなります。

なぜ持続化給付金の不正受給が相次いだのか?

そもそも持続化給付金の対象となるのは、サラリーマンの方などではなく、事業を営んでいた方や副業で確定申告をしている方です。申請できる要件としては「コロナの影響で売上が前年の同月と比較して50%以上減ったこと」を中心に、中小法人や個人事業者等によってさまざまです。

 

給付額は結構大きく、個人事業主だと上限100万円、法人だと上限200万円を受け取ることができます。申請に当たっての必要書類は、去年の確定申告書や、売上が下がったことがわかる売上の台帳とか通帳の写し、あとは本人確認書類くらいです。

 

持続化給付金は支給要件のハードルがそれほど高くないうえに、申請書類も少ないんですね。また、PCやスマホから手軽に申請できるという点もウリになっていました。

 

さらに、給付までの審査に時間がかかりすぎると明日の生活にも困っている人々を救うことができないため、審査をある程度ゆるくせざるを得ませんでした。持続化給付金詐欺はこうした事情を突いた犯行です。あれよあれよと不正受給が出てきてしまいました。

 

制度が開始されたとたん、SNS上で「申請の代行できますよ」「誰でもできますよ」「今まで確定申告していない人でも大丈夫です」とか、「主婦や大学生でも受給できます」といった不審な投稿がたくさん出回りました。

 

大前提として持続化給付金の対象は主に「事業を営んでいる方」であるにもかかわらず、事業をしていたかのように装ったり、コロナの影響で売上が前年同月比で50%減少していることという要件をクリアするために各月の売上高をズラして偽ったり。また、売上が減少しても、コロナの影響ではない場合は受給対象になりません。そうと知っていながら申請するなど…。これらの行為は不正受給であり、犯罪です。

「持続化給付金詐欺」で横行した手口とは?

持続化給付金詐欺は、大まかに①SNS上で集客⇒②申請書類を提出(この時点で虚偽です)⇒③受給に伴い、その成功報酬を受け取る(給付金のうちの50%など)、という流れで行われていました。

 

実際にどのような手口で不正受給されていたかはさまざまですが、大きく2つに分けられます。

 

①事業を営んでいた方が「売上減少の要件」を不正

1つは売上減少の要件を不正していたケースです。申請要件として、前年同月の売上と比較して50%以上の減収をしていないといけないのにもかかわらず、売上があった月を別の月にズラすなどして、単月で見たときの売上を50%以上減ったかのように装います。確定申告では1年分(個人の場合は1月から12月)を会計期間として申告事務を行いますが、売上があった月を別の月にズラしても、1年分の総額で見れば売上は変わりません。

 

②そもそも事業を営んでいない方が“コンサルタント”にそそのかされて不正

2つめは不正のコンサルタントのような人がやっていた手口で、給与所得者や主婦、学生といった「そもそも事業を営んでいない方」を個人事業主だったと偽り、申請されたものです。このケースでは、過去の確定申告書を提出して今年の売上が下がったと装います。

 

過去の売上(もちろん架空です)は、税金がかからないレベルの額で申告されます。給付金をもらうためとはいえ、架空の売上に対して税金を払うことになれば誰しも抵抗感を覚えますからね。売上が100万円ほどあったとしたら、経費やさまざまな基礎控除を使って、税金がかからない程度に抑えます。そのうえで「売上が前年同月比で50%以上減った」という要件を満たして不正受給し、コンサル料として給付金の50%ほどを受け取る、という悪質なケースがありました。

不正受給が発覚したらどうなる?

不正受給が発覚した場合には、給付金全額を延滞金(要するに金利)・加算金つきで返還することになるほか、悪質なケースであれば刑事的責任を問われる可能性もあります。

 

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<不正受給のペナルティ>

●給付金全額の返還

●不正受給の翌日から起算して返還日まで年3%の延滞金の支払い

●加算金として、「受給金額+延滞金額」の2割相当額の支払い

●屋号や氏名等の公表

●内容によっては刑事告発

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例えば持続化給付金100万円を誤って受給し、1年後に不正受給と判断された場合は、延滞金3%として3万円、加算金として20万6,000円が課され、合計123万6,000円を返還することになり、さらにはウェブサイト上で屋号や氏名を公表されます。

 

不正受給にはペナルティが課されますが、要件を満たしていないにもかかわらず誤って申請し、受給してしまった場合については、自主的な返還を受け付けています【図表】。国が調査を始める前に自主的な返還を行えば、原則として加算金・延滞金は課されません。誤って受給してしまったことを認識している方は、不正受給と見なされる前に自主返還しましょう。

 

出典:中小企業庁(https://www.kyufukin-henkan.go.jp/assets/pdf/ichiji_getsuji_jigyou_henkin.pdf)
【図表】持続化給付金・家賃支援給付金を誤って受給された方へ 出典:中小企業庁ウェブサイト(https://www.kyufukin-henkan.go.jp/assets/pdf/ichiji_getsuji_jigyou_henkin.pdf)

 

ただし、返還に当たっても要注意です。給付金の返還手続きを装った詐欺、つまりは自主返還しようとしている人を狙った詐欺も存在します。ここにも落とし穴があるので、くれぐれも気を付けてくださいね。

まとめ

要件を満たさないにもかかわらず受給しまったという相談は、当事務所にも多く寄せられます。不正受給は記録に残りますので、持続化給付金は給付の間口を広くしていた分、これから詐欺があぶり出されていき、逮捕者や氏名を公表される方が増えていくかと思います。

 

もし詐欺集団にそそのかされて受給した場合でも、不正であることに変わりはありません。持続化給付金を始めとする各種給付金を誤って受給してしまった方は、まずは申し出て、返還していくのがよいのではないでしょうか。

 

不正受給をした場合、確定申告も虚偽で行われているので、そちらも併せて修正申告しましょう。放置すると税務署からも怒られてしまいます。また、必要に応じて警察の捜査に協力することになるでしょう。不安な方はまず専門家に相談することをおすすめします。

 

 

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

 

税理士法人松本

税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。

 

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