25年間低迷を続ける賃金
次に、賃金がこれまでどのように推移をしてきたのかを見てみましょう。図表1は毎月勤労統計調査の現金給与総額の推移を示したものです。月給と時給の両方について、名目賃金と実質賃金の推移が示されています。
まず、月給(名目)の動きを見ると、1997年までは着実に上昇していましたが、その後はITバブル崩壊や2008年のリーマンショックなどの影響で、2009年まで低下傾向が続きます。
2010年代の景気回復局面にはわずかに上昇しますが、2022年の数字はピーク時の1997年に比べ1割以上も低い水準にあります。実質賃金を見ても、1996年のピークから一貫して低下傾向が続いていることがわかります。
時給で見ても低迷し続けている日本の賃金
月給は労働時間によって左右されるため、時給による賃金の動きを確認しておきましょう。
正社員とパートやアルバイトなどの非正規社員の賃金を比較する際には、時給が重要な役割を果たします。正社員の多くは月給制であり、労働時間や日数に左右されない基本給が支払われていますが、非正規社員は時給制で労働時間に応じた支払いが一般的だからです。
時給で見ても、日本の賃金は1997年頃にピークに達し、その後しばらく低下傾向が続いたことがわかります。
しかし、名目時給は2012年を底に上昇に転じ、2020年には1997年の水準まで回復し、2022年には1997年の賃金よりも1.5%ほど上昇しています。実質月給も似たようなパターンをたどっていますが、2022年の時点でピークの水準までは回復していません。
以上のように、月給と時給、さらに名目と実質では賃金の動向に若干の差がありますが、いずれも過去25年間で賃金はほとんど変わっていないか、むしろ低下していることがわかります。
1990年代後半から「マイナス」のままの賃金成長率
次に、賃金の成長率に注目してみましょう。月給の成長率は、1990年代初頭には高い値を示していましたが、その後低下し、1990年代後半にはマイナスに転じています(図表2)。
2000年代は、ほとんどの年で賃金成長率がマイナスでしたが、2014年からは名目賃金の成長率がプラスに回復しました。2000年から2013年までの平均上昇率はマイナス0.7%でしたが、2014年からパンデミック前の2019年までの平均は0.6%へ上昇しています。
しかしながら、実質賃金を見ると、2000年から2013年までの平均はマイナス0.5%、2013年から2019年までの平均はマイナス0.6%となっています。
2022年には、名目賃金の成長率が2.0%に達し、日本では1992年以来、30年ぶりに高い水準を記録しました。しかし、インフレが進行したため、実質賃金の成長率はマイナス1.0%となっています。
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