(※写真はイメージです/PIXTA)

原則65歳から受け取れる老齢年金。金融口座に振り込まれた年金を見て、その手取り額の少なさに落胆する人もいるでしょう。本記事では、Aさんの事例とともに日本の年金制度について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

勝ち組元エリートの意外な年金額

現在66歳のAさんは、リタイア前は大企業で部長職を勤め、年収も高く、いわゆるエリート街道を歩んできた人です。65歳で会社を退職し、年金額はAさん自身の年金のみで約300万円、現役時代に築いた貯金は5,000万円となっています。

 

年金額としてAさん1人で300万円(月額25万円)は後ほど記載しますが、同年代の年金額と比べて平均額以上であり、羨む金額といえます。Aさんの妻が2歳年下のため、妻は65歳時見込額であり、来年65歳になります。

 

[図表1]Aさん夫婦がもらえる年金額

 

老齢基礎年金:2023年度満額

妻の振替加算額:1万5,323円

Aさんの老齢厚生年金:標準報酬月額62万円、504月

配偶者加給:39万7,500円

妻の老齢厚生年金:標準報酬月額22万円、40月

※差額加算考慮せず。金額は2023年度額。

 

同年代の年金の平均手取り額はいくらなのでしょうか。66歳の男性の平均年金月額は「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況の年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額」によると、老齢厚生年金14万6,610円(老齢基礎年金含む)、老齢基礎年金は5万8,016円となっています。ですが、全額が手元に振り込まれるわけではありません。

 

同年代の年金額と比べて多いAさんですが、実際に手取りとして受け取れた年金額の少なさに絶句します。会社員として働いている人の給与では、給与から社会保険料や税金が天引きされ、実際に手元に入ってくる手取額は少なくなりますよね。実は年金も給与と同じように介護保険料等が天引きされ、使えるお金(可処分所得)は少なくなっているのです。

 

年金から天引きされるもの

年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税・所得税が天引き(特別徴収)されます。ただし、受給している年金の種類や年金額など、一定の条件があります。

 

年金から天引きされるには、年間の受給額が18万円以上の人が対象となります。ほかの保険料等については介護保険料が天引き(特別徴収)されている人が前提とされ、国民健康保険料(税)や住民税などが天引きされます。さらに年金の支払月の2分の1を超える額を天引きとなる場合、国民健康保険料(税)や後期高齢者医療保険料は天引きの対象とはなりません。

 

住んでいる場所によって保険料の金額が異なる

介護保険料等は、お住まいの市区町村によって違います。年金額が同額でも住んでいる場所によって年金の手取り額が異なるのです。

 

国民健康保険料(税)は、世帯単位で算定し、世帯の被保険者ごとに合計したものです。介護保険料は、65歳以降、3年毎の見直しを受けて、市町村ごとに条例で決められた基準額をもとに、本人や世帯の所得などにより段階的に設定されています。

 

介護保険料額について、2021~2023年度の平均基準額は月額6,014円です。基準額が全国で一番低額の市区町村は、北海道音威子府村・群馬県草津町の月額3,300円、一番の高額は、東京都青ヶ島村の月額9,800円です。地域によって 高齢者人口や介護サービスを利用する人の人数、必要となるサービスに違いがあるなかで、それぞれの自治体が、地域で必要な分の介護サービスを提供できるよう、このような仕組みになっています。

 

収入が同じであっても居住しているところによって、基準額が大きく異なります。さらに世帯の所得などで段階が設定されます。

 

Aさんは都内の中心部に在住のため、介護保険料は年間10万円、国民健康保険料は年間19万円を超えています。さらに所得税、住民税も加味すると、年金額300万円の実際の手取り額は250万円(月額20万円)ほどになります

※筆者計算のため参考金額

 

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