(※写真はイメージです/PIXTA)

原則65歳から受け取れる老齢年金。金融口座に振り込まれた年金を見て、その手取り額の少なさに落胆する人もいるでしょう。本記事では、Aさんの事例とともに日本の年金制度について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

息子たちに削り取られていく5,000万円の貯金

現役時代のAさんは、努力により会社での地位も確立し、バリバリ働いていました。子供は2人いますが、独立し各々家庭を持っています。夫婦の老後をゆっくりと考えていたところ、久しぶりに長男夫婦が顔を出しにきてくれました。

 

2人の息子から「資金援助してほしい」と頼まれ…

長男はAさんに子供が有名私立中学校に合格したため、今後の授業料等のお金の援助を頼みます。希望額は毎月5万円。受験までに想定以上の塾代等の出費がかさんだのと、長男が転勤によって、単身赴任するため、想定外の出費が続くとのことです。

 

これまで、子供達には平等に育ててきたとAさんは自負しています。ですが、今回の長男からの申し出に次男は不満をあらわにしました。次男には子供がいません。長男に援助するならその分、マイホームの購入を希望しているため、家の購入にかかる一部を援助してくれないかといいだしたのです。

 

次男は都内のマンション購入の一部として1,500万円を希望しています。長男の子供が大学卒業するまで援助すると考えるなら、5万円×12ヵ月×10年=600万円。Aさんの性分として平等にと考えるのであれば、長男に900万円(1,500万円-600万円)を贈与した場合、5,000万円あった貯金は一気に半分になってしまいます。

 

年金だけでは暮らせないという現実

公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査(速報版)」によると、2022年の日常最低生活費は月額23万円、ゆとりある生活費は月額38万円です。

 

Aさんの年金から保険料等が天引きされ、長男の子供への援助を年金で賄うとした場合、月額5万円の減額とすると、実際、Aさんが使える年金の手取り額は月15万円。

 

「これで、どう生活すればいいのか……」Aさんは頭を抱えます。

 

1年後、妻が65歳になると年金額も大きく変わります。夫についていた加給年金はなくなり、妻自身の老齢年金に振替加算がつきます。65歳から妻の年金総額が85万8,556円となるため、夫婦2人の収入を1つのお財布とするならば、2人の年金総額が約340万円(月額約28万円)となるため、加給年金額以上になるのは間違いありません。

 

しかし、月額28万円から介護保険料等が天引きされ、長男に毎月5万円を支援し続けるのであれば、夫婦の年金は月額約23万円となり、ゆとりある生活はさておき、日常生活を年金のみで賄うのは厳しい金額となりそうです。

 

貯金5,000万円が半分に、年金の手取り額は減額。悠々自適の生活と考えていたAさんの生活は勝ち組といわれる生活はほど遠いものとなるでしょう。

老後破産を防ぐために

Aさん夫婦が老後破産しないようにするにはどうすればいいのでしょうか。

 

Aさんは現役時代のスキルを活かして、社会保険に加入する働き方をすることで、今後約4年間、年金額を増やします。子供達と話し合いをもち、生前贈与や相続対策を含め、専門家を挟んで相談してみてはいかかでしょうか。

 

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表・FP

 

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