(※写真はイメージです/PIXTA)

事業を繁盛させることに成功した経営者は、老後も比較的ゆとりのある生活を送れるように思えます。しかし、意外にも経営者のなかには老後破産に陥るケースも少なくないと、FPの小川洋平氏はいいます。本記事では、五十田さん(仮名・75歳)の事例とともに、富裕層の老後破産について解説します。

3,000万円の退職金を受け取り、勇退した老舗製菓店の元経営者

五十田春子さん(仮名・75歳)は江戸時代から続く老舗の製菓店の元経営者です。65歳で年金生活を始めたことを機に、娘の久美子さんに社長職を譲り、自身は会長職に就きました。五十田さんがまだ50代だった当時、大不況で経営が危うかった時期に先代社長である夫が急死。不況を乗り切り会社を建て直し、小規模ながらも経営は順調な状態で娘に託し、勇退したのでした。

 

3,000万円もの退職金も受け取り、悠々自適な老後を送っていた五十田さんでしたが、その後に待っていたのは当時からは想像もできない事態です。

浪費癖が治らなかった五十田さん

元経営者である五十田さんは、現役のころから地元の経営者団体に参加し、会合や経営者仲間とのゴルフ、旅行で度々出掛けていました。現役のころからそうやって人脈を拡げ、営業活動で売上を伸ばし、会社を建て直すことができたのですが、会長職になったいまも、当時の経営者仲間との付き合いはほとんど変わらずに続いていたのでした。

 

また、新しいもの好きな五十田さんはスマートフォンも新しい機種が出ればすぐに購入するなど、気になったものは値段を気にせずに使う癖がついていました。会長職として毎月の報酬は15万円を受け取り、公的年金は毎月12万円程度受け取っていましたが、支出は収入を大きく上回ってしまい、退職金もあっという間に使い果たしてしまったのです。

ついに店のお金に手を付けてしまい…

手持ちのお金を使い果たしてしまった五十田さんは、ついに店舗のレジからお金を持って行くようになりました。

 

現社長の久美子さんが異変に気が付いたのは会社の決算期が終わってからでした。税理士から出された決算データと、会社の現預金が合っていないことに気が付いたのです。会社の現預金が合わないことに気付き、スタッフに確認したところ、五十田さんが久美子さんに無断で店のレジからお金を持ち出していたことが発覚したのでした。

 

現会長で元社長の五十田さんといえど、会社のお金を無断で使うことは当然横領です。久美子さんは当然五十田さんを問い詰めましたが、五十田さんは「亡き夫に代わり会社を建て直し、会社に貢献してきたのだからこのくらい当然。経営者団体の付き合いのためなのになにが悪いのよ」と開き直っていました。

 

社長として会社を守ってきた五十田さんに対し、久美子さんは強くいうことができず、ひとまずは会社から五十田さんへの貸付金として処理することにしました。

 

その後も五十田さんは会社のお金を使い込むことを止めようとせずにいましたが、会社の業績が低迷し始め、ついに堪忍袋の緒が切れた久美子さんから会長職を解任、縁を切られることになってしまいました。

 

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