(※画像はイメージです/PIXTA)

政府・与党は11月6日、2024年2月から介護職員等の賃金を月6,000円引き上げる措置を行う方向で調整に入りました。介護業界からの人材流出を重くみてのことです。しかし、同日に厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」によると「実質賃金」が18ヵ月連続でマイナスになっています。この状況下での月6,000円の賃上げにはどのような意味があるのでしょうか。実質賃金の意義にも触れながら解説します。

「実質賃金」と介護職員の給与

物価高のために従来の給与で暮らしていけなくなることを、「実質賃金の低下」といいます。実質賃金とは、労働者の賃金(名目賃金)の額に、物価上昇率を加味して計算される数値です。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によって毎月算出されます。

 

名目賃金が上昇しても、その上昇率が物価の上昇率に追いつかなければ、実質賃金は下がります。そして、日本では2022年4月以降、2023年9月まで、18ヵ月連続で前年同月比「マイナス」となっています。これに対し、消費者物価指数は一貫して前年同月比「プラス」です([図表]参照)。

 

厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年(2023年)9月分結果速報」より
[図表]「実質賃金」と「消費者物価指数」の前年同月比の推移(過去18ヵ月) 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年(2023年)9月分結果速報」より

 

全労働者の平均の実質賃金が「マイナス」になっていることからすれば、名目賃金が低い介護職員は、さらに経済的に苦しい状況にあることがうかがわれます。

 

実質賃金が低下する要因としてよく指摘されるのが、以下の3つです。

 

・物価の高騰

・労働生産性が低い

・労働生産性が向上しても直ちに賃上げにつながらない

 

まず、物価の高騰は、ロシアのウクライナ侵攻による世界的な燃料価格・食料価格の上昇に加え、日本の金利が諸外国より低いことによる「円安」が影響しています。

 

これに対し、労働生産性が低いこと、労働生産性が向上しても直ちに賃上げにつながらないことについては、IT化等の技術革新が進んでいないこと、中小事業者が多いこと、長時間労働が横行していること等、様々な原因が指摘されています。

 

ただし、業種によっては労働生産性の向上に限界があるものもあります。また、お金が儲かるかどうかと、社会に必要とされている仕事かどうかは一応別の問題であることにも留意する必要があります。

 

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