※画像はイメージです/PIXTA

2022年3月以降、外国為替市場では円安が急速に進みました。これにはどのような背景があるのでしょうか。本記事では、元IMF(国際通貨基金)エコノミストで東京都立大学経済経営学部教授の宮本弘曉氏による著書『一人負けニッポンの勝機 世界インフレと日本の未来』(ウェッジ社)から、近年の日本銀行の金融政策と日本経済の状況について解説します。

急速に進んだ円安

日本と海外の中央銀行の金融政策の違いが為替相場に大きな影響を与えています。日本銀行が金融緩和を続ける一方で、FRBは利上げを実施しており、日米間の金利格差が拡大し、円安が急速に進行しました(図表3)。

 

[図表3]日米金利格差とドル円相場

 

2022年3月のFRBの利上げ前、10年物国債利回りで見た日米の金利差は約1.5%でしたが、FRBの利上げに伴い格差が拡大し、同年10月には4%近くまで上昇しました。その後、若干縮小されましたが、2023年7月時点でも3%前半と、1年前と比べてほぼ倍の差があります。

 

こうした日米金利差の変動に伴い、外国為替市場では円安ドル高が進み、2022年3月初めに1ドル=115円だった為替レートが、同年9月には140円台に急騰。

 

政府と日本銀行は、急速な円安に対処するため、9月22日に、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買・ドル売りの為替介入を実施しました。為替介入後も、円安は加速し、10月には1ドル150円台に達し、32年ぶりの安値を更新しました。

 

その後、日本銀行の金融緩和策の修正が予想されたことから、為替相場はドル安.円高に振れ、2023年1月には127円台まで戻りました。しかし、その後再び円安が進み、2023年7月末時点で1ドル=140円台前半となっています。

 

そもそも為替レートとは

ここで、為替レートについて簡単に説明しておきましょう。為替レートとは、円とドルや円とユーロのような2つの異なる通貨間の交換比率のことです。

 

通貨を交換するときの「価格」ですから、基本的に為替レートは通貨の需要と供給のバランスで決まります。そして、経済の変動や人々の予想、さらには中央銀行の政策など多様な要因が、通貨の需給を介して為替レートに影響を与えます。

 

「円高」と「円安」という言葉は、文字通りそれぞれ日本円の価値が高まること、低下することを意味します。例えば、1ドル=100円の為替レートでは、1ドルを買うために100円が必要です。

 

しかし、為替レートが1ドル=200円になると、1ドルを手に入れるのに200円が必要になります。つまり、100円では0.5ドルしか購入できなくなります。1ドル=100円の時よりも100円で買えるドルが減ったことは、円の価値が下がったということです。

 

したがって、為替レートが1ドル=100円から1ドル=200円になる場合、これは円安ということになります。

 

では、なぜ日米金利差が為替レートに影響するのか、考えてみましょう。アメリカの金利が日本の金利よりも高くなると、円安・ドル高になるとはどういうことでしょうか。

 

「円売りドル買い」が日本で拡大している理由

この疑問に答えるには、定期預金を例に考えるとわかりやすいでしょう。

 

皆さんが日本の銀行かアメリカの銀行のどちらかに預金をしようとしているとします。日本の銀行の定期預金金利が0%で、アメリカの銀行の定期金利が3%だとします。アメリカの銀行の金利の方が高いため、そちらにお金を預ける方が有利だと考えるでしょう。

 

しかし、皆さんが持っているのが日本円の場合、そのままアメリカの銀行に預金することができません。まず、手持ちの円をドルに両替する必要があります。つまり、円を売ってドルを買うことになります。その結果、為替レートは円安・ドル高に動くことになります。

 

ただし、現在進行中の円安ドル高は、日米の金利格差が拡大したことだけが原因ではありません。世界的なエネルギーや原材料の価格高騰も影響しています。これにより、輸入のためにドルを調達する必要が増え、円売りが拡大しているのです。

 

 

宮本 弘曉

東京都立大学経済経営学部

教授

 

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宮本 弘曉

ウェッジ社

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