(※写真はイメージです/PIXTA)

相続手続きは非常に煩瑣な作業であり、10ヵ月という限られた時間のなかで、各種の書類収集や相続人間の意思統一等、多くのことを行わなければなりません。ましてや、亡くなった方が日本在住の外国人の方であれば、作業はさらに複雑になると予想されます。少しでも手続きを楽にする方法はあるのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

外国籍の人が亡くなった場合、相続手続きが大変と聞いたが…

 【相談内容】 

 

高齢となった私の父親は外国籍なのですが、外国籍の人の場合、亡くなったあとの相続手続きが大変になると知人から指摘されました。

 

相続登記や銀行預金等の相続財産の解約は、日本国籍の人の何倍も面倒だというのですが、本当でしょうか? 少しでも手続きを楽にする方法はないのでしょうか?

「遺言書」を残す方法も選択肢に

 【回 答】 

 

遺言書を残す方法が有効だと思われます。外国籍の方が遺言を作るには、そもそもどの国の法律が適応されるかを考えないといけませんが、それについては「遺言の方式の準拠法に関する法律第2条」に記載されており、下記のいずれかの法律に従えばよいとされています。

 

●行為地法(遺言を作成する地域を判断する基準)

 

1 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時『国籍』を有した国

2 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時『住所』を有した地

3 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時『常居所』を有した地

4 不動産に関する遺言について、その『不動産の所在地』

 

上記から、相談にある日本在住の外国人の方の場合は、国籍を有する自国の法律で遺言を作成することもできますし、日本の法律に従って遺言を作成することもすることもできます。

 

また、遺言者が二重国籍者の場合には、いずれの国の法律であっても適用されることになります。

 

亡くなったあとの手続きを考えると、日本の財産の相続については、日本の方式で遺言を作成する方がスムーズに進むので、日本の方式で遺言を作成したほうがいいでしょう。

 

◆遺言書は、どの言語で作成することになる?

外国人が自筆証書遺言をする場合には、遺言者がその全文、日付及び氏名を自著し、これに押印をするか署名をすればよく、使用言語については規定がないので、外国語で遺言を作成することは可能です。

 

ただし、公正証書遺言は日本語で作成しなければならないので、遺言者が日本語をまったく話せない場合には、通訳などを立ち会わせる必要があるでしょう(「日本公証人連合会 _外国文章認証「公証事務_7-2 外国文認証」を参照)。

 

◆外国籍の方が遺言書を作成する際の注意点

日本に定住する外国籍の方が遺言書を作成する場合は、遺言書内に「遺言者の国籍に関わらず、日本国民法の方式に基づき遺言者は本遺言書を作成する」等の文言が必要でしょう。

 

筆者の事務所でも外国籍の方の遺言に基づく不動産登記や、遺言執行手続のお手伝いなどをしていますが、すべて公正証書遺言に基づくものです。

 

公正証書で作成する場合、上記のような日本語で作成しないとならないハードルはありますが、逆にいうなら、こうした文言を漏らすこともないので安心です。

 

そもそもその後の相続手続きも楽ですので、費用が掛かったとしても、必ず公正証書にて作成するようにしましょう。

 

公正証書の場合、面倒な外国籍の方の法定相続人の確定も、すべてする必要はありませんし、海外に住んでいる相続人との遺産分割協議も不要です。

 

このため、日本国籍の方でもメリットの大きい公正証書遺言ですが、日本に定住されている外国籍の方にとっては、よりメリットが大きいと言えるでしょう。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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