(※写真はイメージです/PIXTA)

かつて“世界の警察”といわれた米国ですが、近年そのプレゼンスは急激に低下しています。中間層の没落に民主・共和両党の求心力低下、議会の機能不全など、政治・経済の面で「米国は衰弱している」といった声が聞かれるようになりました。しかし、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は「世界のなかでも米国経済の強さは際立っている」といいます。いったいなぜか、詳しくみていきましょう。

経済の強さが「悲観論」を打ち負かす可能性

米国経済のこの強さが米国のプレゼンスを押し上げ、世界秩序再構築を成し遂げることができるのか、ここに議論の焦点がある。当社は、どれほど米国経済は強いのか。その強さが米国主導の世界秩序の再構築に結びつくとしたら、どのような経路が想定されるのか、に関して検証していく。それには歴史の回顧が不可欠である。

 

1971年から始まった第2次戦後体制

第2次戦後体制ともいえる現在の世界経済政治秩序の骨格は1971年の2つのニクソンショックによって形成された。いまそれが音を立てて崩れつつある。

 

その第1は米中国交回復である。世界秩序のなかに共産中国を招き入れ、世界最大の8億の民(当時)が世界市場経済の一員になったが、米中対決でそれが壁にぶつかった。第2のニクソンショックはドル金交換の停止で、以降米国は貿易赤字を増やし続け対外債務が膨張した。

 

ドル過剰からドル不足の時代へ

このドルの垂れ流しシステムが、現代のグローバライゼーションの本質である。ドルの垂れ流しは、米国国民には消費を刺激し続けることで、海外には対米輸出を増加させることで恩恵をもたらした。日本、アジアNIES、中国の離陸で始まったアジアの時代は、ニクソンショックの賜物であった。しかしこれも限界にぶち当たっている。

 

1970年当時10%だった米国の財輸入依存度が8~9割に達し、もう輸入を増やす余地がなくなった。他方で米国のサービス輸出と、所得収支黒字が大きく増え始めた。

 

世界経済の最大のブライトスポットはアジアでもグローバルサウスでもなく、サイバー空間である。この急速に発展している知の塊であるサイバー空間、インターネット・AI等の分野において、米国は世界需要をほぼ独占し、その利用料金を釣り上げている。

 

欧州や日本はインターネットプラットフォーマーの独占にペナルティーをかけようとしているが、代替供給者が自国に存在していないのであるから、無駄なあがきである。となると米国の経常赤字は減少に転じ、赤字垂れ流しによるドル供給は減速し、ドル不足時代が訪れることになる。

 

またイノベーションの母国、米国の経済成長率は他国を凌駕し始め、それによる高金利が米国への資金集中を促進し始めた。その結果起きるドル高は、覇権国米国の財政力を強化し、世界秩序の再構築の推進力となるだろう。

 

出所:
[図表5]ドルインデックスの推移 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ

 

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武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年10月25日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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