経済の強さが「悲観論」を打ち負かす可能性
米国経済のこの強さが米国のプレゼンスを押し上げ、世界秩序再構築を成し遂げることができるのか、ここに議論の焦点がある。当社は、どれほど米国経済は強いのか。その強さが米国主導の世界秩序の再構築に結びつくとしたら、どのような経路が想定されるのか、に関して検証していく。それには歴史の回顧が不可欠である。
1971年から始まった第2次戦後体制
第2次戦後体制ともいえる現在の世界経済政治秩序の骨格は1971年の2つのニクソンショックによって形成された。いまそれが音を立てて崩れつつある。
その第1は米中国交回復である。世界秩序のなかに共産中国を招き入れ、世界最大の8億の民(当時)が世界市場経済の一員になったが、米中対決でそれが壁にぶつかった。第2のニクソンショックはドル金交換の停止で、以降米国は貿易赤字を増やし続け対外債務が膨張した。
ドル過剰からドル不足の時代へ
このドルの垂れ流しシステムが、現代のグローバライゼーションの本質である。ドルの垂れ流しは、米国国民には消費を刺激し続けることで、海外には対米輸出を増加させることで恩恵をもたらした。日本、アジアNIES、中国の離陸で始まったアジアの時代は、ニクソンショックの賜物であった。しかしこれも限界にぶち当たっている。
1970年当時10%だった米国の財輸入依存度が8~9割に達し、もう輸入を増やす余地がなくなった。他方で米国のサービス輸出と、所得収支黒字が大きく増え始めた。
世界経済の最大のブライトスポットはアジアでもグローバルサウスでもなく、サイバー空間である。この急速に発展している知の塊であるサイバー空間、インターネット・AI等の分野において、米国は世界需要をほぼ独占し、その利用料金を釣り上げている。
欧州や日本はインターネットプラットフォーマーの独占にペナルティーをかけようとしているが、代替供給者が自国に存在していないのであるから、無駄なあがきである。となると米国の経常赤字は減少に転じ、赤字垂れ流しによるドル供給は減速し、ドル不足時代が訪れることになる。
またイノベーションの母国、米国の経済成長率は他国を凌駕し始め、それによる高金利が米国への資金集中を促進し始めた。その結果起きるドル高は、覇権国米国の財政力を強化し、世界秩序の再構築の推進力となるだろう。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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