(※画像はイメージです/PIXTA)

社会の高齢化に伴い、社会保険料の負担が増加し続け、その分、手取りが減ってきています。手取りをできる限り増やす方法としてよく挙げられるのは「節税」ですが、実は、会社の「社長」であれば、「ボーナス」を利用して社会保険料を抑えられる方法があります。本記事では、その方法について、税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ 共同代表)が解説します。

◆ケース2|役員賞与スキームを用いる場合

【ケース2|役員賞与スキームを用いる場合】

・東京都・46歳

・協会けんぽ加入

・月給20万円、役員賞与960万円(合計年収1,200万円)

 

月給20万円、役員賞与960万円を支給するケースです。この場合、社会保険料総額は以下のようになります(2023年10月時点)。

 

・月給にかかる健康保険料:2万4,360円×12ヵ月=29万2,320円

・役員賞与にかかる健康保険料:68万2,686円

・月給にかかる厚生年金保険料:3万6,600×12ヵ月=65万8,800円

・役員賞与にかかる厚生年金保険料:27万4,500円

⇒総額190万8,306円

 

このように、同じ年収1,200万円でも、役員賞与スキームを用いたケース2は社会保険料が190万8,306円となり、12等分して支給したケース1の284万5,512円と比べ、社会保険料が年間93万7,206円も抑えられます。

 

役員賞与スキームの活用を検討する場合の注意点

このように、役員賞与スキームを活用すると社会保険料を大幅に節約できますが、もし利用する場合は、注意しなければならないことが2つあります。

 

【役員賞与スキームの注意点】

1. 退職金を受け取る時期(勇退時期)が近い場合はおすすめできない

2. 毎月の家計が苦しくなる可能性がある

 

◆注意点1. 毎月の家計が苦しくなる可能性がある

第二に、毎月の給与の額をあまりに低くしてしまうと、ボーナスを受け取る前の期間、月々の家計が苦しくなる可能性があります。

 

毎月の家計の収支を把握して、無理のない額に設定する必要があります。

 

◆注意点2. 退職金を受け取る時期(勇退時期)が近い場合はおすすめできない

第一に、退職金を受け取る時期(勇退時期)が近い場合はおすすめできません。

 

退職金には、月々の給与の額(報酬月額)を基準として、経費にできる額の上限(損金算入限度額)が決まっているからです。

 

「功績倍率法」によれば、損金算入限度額の計算式は以下の通りです。

 

報酬月額×在任年数×功績倍率

 

もし、月々の給与の額を少なくすると、退職金の損金算入限度額が小さくならざるをえず、それを超えた部分の額は損金算入が認められないことになります。

 

したがって、退職金を受け取る時期(勇退する時期)が近い場合はおすすめできません。

 

このように、役員賞与スキームを活用すると、社会保険料の節約につながることがあります。しかし、その反面、月々の家計が苦しくなる可能性があるという問題や、あとで勇退する際に会社が退職金を損金算入できる額が限られてしまうという問題があります。それらに十分に注意して活用する必要があります。

 

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ 共同代表

公認会計士

税理士

 

 

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