「虫がよすぎる…」不倫相手と長年同棲する夫から別れを切り出された!「不貞行為をした配偶者」からの離婚請求は認められるのか【中央大学法学部教授が解説】

「虫がよすぎる…」不倫相手と長年同棲する夫から別れを切り出された!「不貞行為をした配偶者」からの離婚請求は認められるのか【中央大学法学部教授が解説】

さまざまな理由で離婚に至るカップルは増加しています。しかし、一度婚姻関係となった以上、財産や子供の親権などの問題をめぐってトラブルになるケースは少なくありません。本記事では、中央大学法学部学長である遠藤研一郎氏の著書『はじめまして、法学 第2版 身近なのに知らなすぎる「これって法的にどうなの?」』(株式会社ウェッジ)より、有責配偶者からの離婚請求や離婚後の親権問題について解説します。

1時間に24組あまりの夫婦が離婚する日本

結婚したものの、いろいろな原因で離婚に至ることがあります。厚生労働省の「人口動態統計特殊報告」によると、令和2(2020)年の離婚件数は、19万3253件です。単純計算で、1時間に24組あまりの夫婦が離婚していることになります。熟年離婚は高止まり状態。また、近年増加している国際結婚の場合は、離婚率もさらに高くなるのが現状です。

 

離婚までの道のり

離婚の方法には、主たるものとして、協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。このうち、協議離婚とは、夫婦間の協議を経て合意に達した場合に離婚届を提出して成立する離婚です。離婚全体の88%程度を占めます。

 

しかし、当事者だけで協議が整わない場合には、家庭裁判所に夫婦関係調整の家事調停を申し立てます。家事調停とは、裁判所(家事裁判官と家事調停委員からなる調停委員会)が間に入りながら、当事者の話し合いによる自主的解決を目指すものです。これが調停離婚です。

 

調停を行わずに、いきなり裁判をすることはできません(専門的にこれを、「調停前置主義」といいます)。離婚に際しては、夫婦で得た財産の清算、財産分与、慰謝料、離婚後の扶養、親権者などの問題を解決するため、夫婦間の話し合いが欠かせないからです。離婚全体の10%程度を占めます。

 

そして、調停も整わない場合には、最終的に、裁判離婚となります。裁判離婚の場合、一方の当事者が離婚を望まないのに、裁判所の力で強制的に離婚が成立することになります。そのため、民法770条1項※1が定める法定離婚原因がある場合にのみ認められます。結果として、離婚のために、多大な時間や労力を費やす場合が少なくありません。

 

※1【民法770条】①夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

 

1. 配偶者に不貞な行為があったとき。

2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

 

不貞行為をした者からの離婚請求は認められる?

たとえば、A夫が、勝手に家を出てB子と長年同棲をしたうえで、法律上の妻であるC美に離婚を求めた場合、その離婚の請求は認められるのでしょうか? とくに、C美は、離婚したくないと思っている場合に、原因を作ったA夫(「有責配偶者」といいます)が、みずから離婚を求められるとしたら、少し虫がよすぎませんか? 

 

これに関して、最高裁判所は、以前、夫の勝手な請求を認めるのならば、妻は踏んだり蹴ったりであるとして、夫からの離婚請求を認めませんでした(最高裁昭和27年2月19日判決)。しかし、その後、徐々に、実質的な夫婦関係に着目し、実質的に破綻している場合には、民法770条1項5号の離婚原因に該当し、有責配偶者からの離婚請求も認めるようになりました。

 

最高裁大法廷昭和62年9月2日判決では、夫婦の別居が、両当事者の年齢・同居期間との対比において相当の長期間におよび、夫婦間に未成熟子が存在しない場合には、離婚請求を容認することが著しく社会正義に反するような特段の事情がない限り、有責配偶者からの離婚請求も認められるものとしました。

 

この考え方は、破綻した結婚を清算したうえで、新しい人生を歩み始めるほうが、お互いのためであるとの発想に基づくものです。では、意に反して離婚を余儀なくされる配偶者(C美)の生活保障はどうなるのでしょうか?

 

それは、形ばかりの婚姻を継続させるという形で実現するのではなく、有責配偶者から、財産分与・慰謝料請求・年金分割・子どもの養育費などを十分に支払ってもらうことによって実現していくべきものと考えられます。

 

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はじめまして、法学

はじめまして、法学

遠藤 研一郎

株式会社ウェッジ

「法的なものの考え方」を育てる法学入門、増補・改訂版! いざ!というときにもう困らない。ずっと関わる法学を、もっと身近に。

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