(※写真はイメージです/PIXTA)

誰もが気軽に動画を投稿できるほか、他者の動画にコメントをすることもできるYouTube。匿名でコメントすることも可能なため、ときには誹謗中傷の舞台となってしまうことも。しかし、仮にユーザーが匿名であっても「開示請求」をすることで相手を特定できる可能性があります。では、YouTubeへの開示請求はどのように進めればよいのでしょうか? Authense法律事務所の弁護士が詳しく解説します。

YouTubeのコメントで誹謗中傷されたら開示請求できるのか

YouTubeに動画を投稿すると、閲覧者がコメントを残してくれることがあります。動画の内容に賛同するコメントや活動を応援するコメントなどがつくのは、動画投稿者にとって喜ばしいことでしょう。しかし、なかには心ないコメントや誹謗中傷を書き込むユーザーも存在します。チャンネルの認知度が上がり閲覧数が増えてくると、誹謗中傷を目にする機会も増えてしまうかもしれません。

 

では、YouTubeのコメントで誹謗中傷をされた場合、開示請求をすることはできるのでしょうか。順を追って見ていきましょう。

 

「開示請求」とは?

開示請求とは、コメントの投稿者が誰であるのか特定するための手続きです。YouTubeは実名で利用する人も多いものの、匿名ユーザーも少なくありません。特に、誹謗中傷をするようなユーザーは、その大半が匿名でしょう。一方で、誹謗中傷をした相手に損害賠償請求などの法的措置をとるためには、原則として相手が特定できていなければなりません。


そこで、損害賠償請求などに先立って開示請求を行い、相手の身元を特定することとなります。開示請求はYouTubeに対して裁判外で行うこともできるものの、任意での開示に応じてくれる可能性はほとんどありません。そのため、通常は裁判上で開示請求をすることとなります。

 

「誹謗中傷」とは?

誹謗中傷は一般的に、「悪口や根拠のない嘘等を言って、他人を傷つけたりする行為」などを指します※1

 

一方で、法律には誹謗中傷の明確な定義がありません。そのため、「誹謗中傷をされたら開示請求ができる」などと一概に言い切ることは困難です。実際には、その誹謗中傷の中身を検討して、開示請求の可否を検討することとなります。

 

YouTubeでの誹謗中傷に対する開示請求が難しいケース

開示請求は、単にコメントが不愉快であるというだけで認められるものではありません。開示請求が難しい主なケースは、次のとおりです。開示請求ができそうかどうか判断に迷う場合には、弁護士へご相談ください。

 

■権利侵害と評価できない場合

開示請求が認められるためには、開示請求をする者の権利が侵害されたことが、明らかでなければなりません(プロバイダ制限責任法5条1項1号)。たとえ耳の痛い内容であっても正当な批判であれば、開示を受けることは困難です。


一方で、たとえば「この人は違法薬物を使っている」など社会的地位を下げるような内容が書き込まれた場合などには、開示が認められる可能性が高いでしょう。

 

ただし、そのコメントに公共性や公益性がありかつ内容が真実である場合には違法性が阻却されるため、開示を受けることはできません。

 

■投稿から時間が経ちすぎている場合

いくら悪質なコメントであっても投稿から時間が経ちすぎている場合には、開示請求が困難となります。


なぜなら、プロバイダでのログ保存期間が過ぎ、ログが残っていない可能性が高いためです。ログの保存期間はプロバイダによって異なりますが、おおむね3ヵ月から半年程度とされていることが多いでしょう。そのため、誹謗中傷への開示請求は、できるだけ早期に対応することがカギとなります。

 

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