(※写真はイメージです/PIXTA)

「家は3回建てないと理想の家にならない」といわれますが、人生で一番大きな買い物をそう何度もできるわけではありません。本当に快適に過ごせる家を建てる秘訣は、「後悔」を知ることです。YouTube不動産 印南和行氏の著書『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、後悔しない「間取り」の決め方を紹介します。

間取りの失敗が生み出す「毎日の疲れがとれない寝室」

寝室は寝るだけの部屋と思いがちですが、通勤している人にとっては在宅時間の半分以上を過ごす場所です。寝室の間取りを考える際、睡眠を妨げる要素がないかどうか、さまざまな角度からチェックしている人はどれだけいるでしょうか。暮らしはじめてから「この間取りのせいで眠れない」といった失敗もあるのです。

「吹き抜けに面した寝室」は眠りの質を下げる

吹き抜けには音が上に響きやすいというデメリットがあります。1階のリビングが吹き抜けになっていて、2階の吹き抜けに面したところに寝室があると、テレビの音やゲームをしている音、キッチンの水音などが想像以上に響いてきて驚きます。現代の気密性の高い住宅ならではの悩みですね。

 

吹き抜けの先に寝室を配置したいというと、設計士さんからは「音が響きますよ」という忠告(アドバイス)があると思います。実際にどの程度響くものなのか、間取りを決める前に確かめる人は少ないのではないでしょうか。できればモデルハウスなどで一度は体感してみてください。

 

【図表】は、寝室に音が響きやすい間取りの一例です。寝室からリビングを見下ろせる窓があります。
 

出所:YouTube不動産 印南和行著『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)
【図表】寝室に音が響きやすい間取り 出所:YouTube不動産 印南和行著『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)

 

テレビの音は上部にも抜けていくので、テレビのボリュームを上げれば上げるほど2階もうるさくなってしまうんですね。リビングの壁や天井に吸音材を使用したり、寝室の壁に遮音シートを入れたりすれば、ある程度は軽減できるでしょう。

 

吹き抜けに接している寝室の窓を、テレビの大きな音が小さな話し声程度まで抑えられる防音窓にするのもよいですね。

 

「わが家は家族みんながいっせいに就寝するから大丈夫です!」というご家庭もあるでしょう。暮らしはじめて数年はそのような状況であっても、家族のライフスタイルは年齢とともに変わります。ステキなマイホームであっても、間取りのせいで暮らし方が制限されてしまうのはちょっと残念です。

 

若いときには気にならなかったことも、年を重ねるごとにストレスになってしまうこともあるので、つねによい睡眠がとれる寝室にすることは大切ですね。

「1階の寝室」は寝不足になる可能性も

寝室は2階に配置する間取りが多いですが、2階にリビングと水まわりを集約して1階に寝室を設けると、さまざまな要因から寝不足になる可能性があります。

 

ひとつめの理由は、2階の浴室や洗面所、トイレの真下に寝室があると、水まわりの水音が気になって眠れないからです。

 

マンションでもそのような悩みを聞くことがありますが、排水音は思いのほか階下に響きます。木造住宅であればなおさらです。シャワーの音や風呂椅子を引きずる音、トイレや洗面所の扉を開閉する音や壁の中のパイプスペースを通って水が流れる音など、早朝、深夜の水音って多いんですよね。遅い時間に入浴する家族がいると、せっかく寝ついたところで上から水音が響いてきて起きてしまう人もいます。

 

また、お風呂上がりに洗濯して乾燥機を使うと、洗濯機や乾燥機の音や振動まで響くことがあるので注意が必要です。2階に水まわりを集約する場合は、玄関などのように人が長くいない場所の上を選んだほうがよいですね。

 

2つめの理由として、1階の寝室が人通りの多い道路に面していると、遅い時間に話し声やうるさいエンジン音にびっくりして起きてしまうことがあります。やむをえずそのような位置に寝室を置く場合は、遮音性能の高い二重窓にするなどの対策を講じましょう。

 

3つめの理由は、1階に寝室を設けると冬場は寒いからです。とくにリビングが2階にあって、2階に人が集まっていると、寝るために下りたときにかなりの寒さを感じてしまいます。1階は、地面の冷えがダイレクトに伝わってくるので、とくに足元の冷えには注意しなければなりません。早朝もかなり冷えます。

 

冬の寒さを軽減するには、設計の段階で床下の断熱や窓の大きさ、数に気配りをする必要があります。日当たりのよい部屋だからと大きな掃き出し窓を設置して、ほかの方角にも大きめの窓を設置。昼間、日光を取り入れられればよいのですが、カーテンやシャッターをほとんど閉めっぱなしの環境では、夜の寒さが増してしまいます。

 

窓の近くにベッドを置いているとさらに寒さを感じてしまうので、寝室の窓は断熱ガラスを使用したり、断熱シートを貼ったりするとよいでしょう。窓の断熱性を高めると、暮らしの快適度がグーンとアップします。

 

寒さや暑さは窓から来るといわれるように、窓が大きいことや多いことがマイナスに働いてしまう場合もあります。部屋の用途やライフスタイルに応じて最適なサイズや数を選びましょう。

 

 

YouTube不動産 印南和行

株式会社南勝代表、一級建築士

住宅専門チャンネル「YouTube不動産」運営者

 

全国不動産売却安心取引協会理事長、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。1972年、東京都生まれ。建築の専門学校を卒業後、建設会社で現場監督経験を積み、2011年に株式会社南勝を設立。これまでに1000件以上の住宅のインスペクション(建物診断)を行なうほか、不動産会社向けのコンサルティングを手がける。

「後悔のない家づくりをしてほしい」という思いから、2020年9月に立ち上げた住宅専門チャンネル「YouTube不動産」が「わかりやすくて参考になる」と大好評で、チャンネル登録者数9.91万人、総視聴回数3400万回を超える(2023年10月時点)。著書に『プロが教える 資産価値を上げる住まいのメンテナンス』(週刊住宅新聞社)がある。

 

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※本連載は、YouTube不動産 印南和行氏の著書『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

プロ建築士が絶対しない家の建て方

プロ建築士が絶対しない家の建て方

YouTube不動産 印南和行

日本実業出版社

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