奨学金を債務整理した方がよいケース
奨学金を債務整理した方がよいケースとして、奨学金以外にも借金がある場合が挙げられるでしょう。
例えば、奨学金以外に消費者金融からの借り入れやカードローンなど複数の借り入れがある場合、奨学金を除いたすべての債権を任意整理することで、月々の返済額を抑えることが可能です。
個人再生や自己破産では、奨学金だけを対象から外すことはできません。現在の返済が苦しい状況で、個人再生したとしても返済が難しい場合には、自己破産を検討することで返済をゼロにすることができるでしょう。
奨学金を債務整理した方がよいかどうかは、現在の収入や資産状況、保証人の状況や他の借り入れなどによっても異なります。
「奨学金の返還分が返せないけど、債務整理してよいかの判断がつかない」という場合にどうすればよいかについても、以下で詳しく解説します。
奨学金が返せない場合の対処法
「奨学金の返還が苦しい」「奨学金が返せない」という場合の主な対処法は以下の通りです。
返還期限猶予を申請する
奨学金には、返還が難しくなった場合に検討できる以下のような救済措置があります。
・減額返還制度:毎月の返済額を減額できる
・返還期限猶予制度:返済期限の猶予を受けられる
・返還免除制度:奨学金の一部または全部が免除される
いずれの措置も申請には一定の要件を満たしている必要があります。
例えば、返還免除制度の場合、本人死亡や事故などで障害を負い、返還が困難な状況である場合に申請が可能です。その他にも、災害、経済困難、失業などの事情が生じた場合なども一定の要件に含まれます。
他の減額制度については、年収325~300万円以下の場合に申請できる可能性があります。債務整理を検討する前に、日本学生支援機構の救済措置が申請できるか確認してみましょう。
個人再生や自己破産を検討する際の注意点
奨学金は借り入れする際に保証人を立てるか、保証会社をつけて申し込むこととなります。家族などに保証人になってもらい奨学金の貸与を受けた場合、個人再生や自己破産で奨学金を債務整理すると、減免した奨学金を保証人へ一括請求されてしまうため注意が必要です。
保証会社へ保証料を支払って奨学金の貸与を受けている場合、奨学金を債務整理した場合の債権者は保証会社となるため、保証人へ迷惑をかけるリスクは回避できるでしょう。
保証人を立てる人的保証で奨学金を借りた場合、保証人に迷惑をかけたくない場合は上記の救済措置や、奨学金以外の借金を任意整理する方法などを検討することとなります。
人的保証を利用している場合は、自己破産・個人再生は避けなければならないので、任意整理の前に必ず確認しましょう。
借金返済が苦しくなったら専門家へ相談を
奨学金を含む借金の返済が苦しい場合、それぞれのケースによって選択できる解決方法は異なります。奨学金以外を任意整理した方がよいのか、日本学生支援機構の救済措置が申請できるのか、自己破産や個人再生を検討するべきか判断するには、専門的な知識や経験も必要です。
借金や奨学金の滞納は絶対厳禁
借金や奨学金の滞納は、放置すればするほど状況が悪化してしまいます。返済・返還に困ったら、早い段階で専門家へ相談するようにしましょう。
奨学金を債務整理すること自体は可能ですが、奨学金を任意整理しても利息しかカットできないためあまり意味がなく、個人再生や自己破産では減額した分の請求が保証人にいってしまう可能性があるので注意が必要です。日本学生支援機構の救済措置や、奨学金以外の借金を任意整理する方法なども検討できるため、奨学金や借金の返済に関する悩みは早めに弁護士や司法書士へ相談しましょう。
また、督促状が届く事態となっても、督促異議を提出し対処すれば和解調整してもらえる可能性があるので、絶対に無視はせずに直ちに対処するようにしましょう。
東京司法書士会 司法書士
寺島 能史