「証拠を残す」がカギ…生前贈与の注意点3つ
では、生前贈与をする際はどのような点に注意しなければならないのでしょうか?
1.「贈与契約書」を作成する
生前贈与が成立するためには、贈与者が「この財産をあげます」受贈者が「この財産をもらいます」という両者の合意が必要となります。
この合意の証拠を残すため、贈与者(親)と受贈者(子)が署名押印し「贈与契約書」を作成しておきましょう。できれば公証人申告役場で確定日付をとっておくと、より証拠力が高まります。
2.直接渡すのではなく「銀行振込」で行う
現金で直接受贈者(子)に渡してしまうと客観的な証拠が残らないため、生前贈与は銀行振込で行いましょう。こうすることで、通帳に印字されるなど客観的証拠が残ります。
3.通帳は受贈者本人に管理させる
生前贈与を行う場合、贈与者がその通帳や印鑑を管理していると、贈与者が亡くなった際受贈者が自分で使えず、贈与とみなされなくなる可能性があります。通帳は子や孫本人に管理させるようにしましょう。
“子に内緒”はNG!追徴課税を受けない生前贈与のポイント
今回の事例で子に追徴課税が課された原因は、Aさんが“子に内緒でこっそり”生前贈与を行っていたことにあります。
「預金を子や孫に管理させたら無駄遣いするのではないか」「なにもしなくても親から財産をもらえると思わせるのはよくない」「でも、子の将来のために役立ててほしい」などと、親心から子に知らせずにこっそり贈与を行っているケースが多いのですが、客観的な証拠がないと贈与とみなされず、今回のように子が追徴税額と加算税等を支払うこととなります。
また、Aさんのように毎年100万円の贈与を10年間行った場合、これは最初から総額1,000万円の贈与をする約束であったとする「定期贈与」とみなされる可能性があります。この場合、1,000万円に対し贈与税が課されますので注意が必要です。
さらに、「私はあえて110万円を超える贈与を行い、贈与税の申告と納税を済ましているから大丈夫!」とも思わないでください。申告を行っている場合であっても、贈与の“実態”がない場合はやはり否認される可能性があります。
◆まとめ
「毎年110万円以下の生前贈与であれば相続税の負担が少なくなる」ということは広く知られていますが、今回みてきたように“実態がない”場合は、税務調査の際贈与が否認され追徴税額を徴収されますのでご注意ください。
また、このたびの税制改正により、2024年以降の生前贈与加算は3年から7年に徐々に延びることになりました。つまり、生前贈与による相続税対策に歯止めがかけられたことになります。
したがって、生前贈与を行う際は専門家等に相談しながら進めることをおすすめします。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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