(※写真はイメージです/PIXTA)

タワーマンションとは、主に地上20階建て以上の居住用高層建物のこと。その威容から勝ち組の高所得者が暮らすイメージがあるものの、実態は必ずしもそうとは限らないようです。タワマンに憧れてやまない、ごく普通の会社員男性に話を聞きました。

タワマン住民の生活ぶり、さぞかしゴージャスと思いきや…

皆さん憧れのタワーマンション(タワマン)。最近は地方都市にも建設が進んでいますが、そもそもは1997年、建築基準法・都市計画法の法改正により建設のハードルが下がったことで、首都圏近郊でのタワマンの建設ラッシュが始まりました。そのムーブメントのなか、晴海フラッグの最寄駅となる大江戸線「勝どき」駅、隣駅の「月島」あたりにタワーマンションが林立することになります。

 

勝ち組、エリートたちが集積する巨大建造物…。おそらくその建物のなかでは、さぞかしゴージャスな生活が繰り広げられているのではと想像しますが、タワマン住民の方に話を伺うと、必ずしも皆さん、余裕がある方ばかりではなさそうです。

 

30代の山田さんは、年収450万円というごく普通のサラリーマン。手取りは月30万円程度でボーナスもありません。

 

「いまの会社に転職してすぐ、家賃19万円の1DKタイプのタワマンに引っ越しました」

 

タワマンの部屋にはさまざまな形態があり、すべてが大空間とは限りません。ひとり暮らし用、2人世帯向け用の手狭な部屋も珍しくないのです。このようなタイプの部屋は、タワマン好きの若年層に人気です。

 

山田さんは学生時代から「人生に一度でいい、タワマンで暮らしてみたい」と、強い憧れを持っていたといいます。

 

「とにかく、タワマン暮らしが夢でした。夕暮れどき、ビールを片手にひとり静かに海を眺めて…。最高じゃないですか。正直、給料のほとんどが家賃で消えますが、まあ、男のロマンですよ。海外旅行や高級外車につぎ込む人だっているじゃないですか。それと同じだと思います」

 

山田さんは会社のランチをウォーターサーバーの水と菓子パン1個ですませるなど、節約に余念がない。

「ひとときの幸せ」タワマン夫婦に起きた悲劇

「3歳年下の彼女がいるのですが、彼女もこの部屋を気に入ってくれていて。たまに彼女が買ってくれた食材で、2人で料理を作ったりして…。ゆくゆくは会社員の彼女と結婚して、そうしたらちょっとは贅沢もできるかなと思っていました」

 

ところが、山田さんのささやかな計画は大きく狂ってしまいます。

 

「会社の業績悪化で給料が減り、手取りが2万円ほど少なくなりました。そして、家賃が1万円上がりました」

 

山田さんはこれ以上生活を切り詰めることができず、ついに愛してやまないタワマンから去る決意をします。

 

引っ越し先は、家賃8万円のワンルームマンション。便利な下町で、通勤時間が20分延びた以外は、とくに不便はないといいます。

 

しかし、山田さんはうつ状態になってしまいました。

 

「タワマンの利便性に、すっかり甘やかされていたことに気づきました。いまは自由にゴミも出せませんし、上階の音も響くなど、生活のストレスは大きいです。しかし、なにより眺望が…。窓を開けると商店街です。道路が近い。道路を歩いている人と、普通に目が合う。こんな生活、耐えられない…」

 

山田さんは、静謐でプライバシーが守られた環境にすっかり慣れてしまい、いまの生活が苦痛でしかないといいます。

 

「生活レベルを落とすって、ここまで心が削られるのですね…」

 

そしてもうひとつ、重大な転機がありました。

 

「彼女にもフラれました」

 

「タワマンロス」となった山田さんに、彼女が愛想をつかしてしまったのだといいます。

 

「もう、プライドも粉々ですよ。あの部屋にいたときは、本当に充実していたのに…」

 

しかし、給料30万円のうちの19万円が家賃で消えるという、かつての山田さんの「ギリギリ生活」を考えれば、むしろいまの暮らしのほうが正常に思えるのですが…。

 

近年ではさらにタワマン価格が上昇しており、日本でも55億円を超える物件が登場するなど、とんでもない事態になっています。そこまでいかなくても、軽く数億円を超える物件はゴロゴロあり、しかもあっという間に売り切れてしまうという現実もあります。

 

日本で進展する、所得の二極化。ある一部の人にとってのタワマンは日常生活を送る場でも、ある一部の人にとっては、ほんの一瞬だけ非現実な世界を味わう、アトラクション的な空間。この一瞬、同じタワマンという空間にいても、この二者が交差することはないのかもしれません。

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