(※写真はイメージです/PIXTA)

“散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする”でおなじみの「明治維新」。戊辰戦争に勝った新政府は急速に近代化を進めました。今回は、有名予備校講師で『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)著者の山中裕典氏が、明治政府が整備した「立憲体制」の詳しい中身について解説します。

日本初の「選挙」実施も…有権者は国民のわずか“1%”

憲法と同時に公布された衆議院議員選挙法(1889)では、制限選挙が定められました(有権者は直接国税(地租・所得税)15円以上を納める25歳以上男性、人口の約1%)。

 

また、黒田清隆首相は、政府が政党に左右されず政策を進める超然主義を表明しました。

 

しかし、〔第1次山県有朋内閣1889~91〕が実施した第1回総選挙では、民権派の民党立憲自由党・立憲改進党、野党)が過半数を獲得し、民意を背景に衆議院での影響力を増していきました

 

出所:『大人の教養面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋
[図表5]予算の審議 出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋

 

第1~第4議会…政府「軍事費増額!」vs.自由党・立憲改進党「行政費削減!」

第1議会では、山県首相主権線(国境)に加えて利益線朝鮮)の防衛を主張して軍事費増額を要求したのに対し、民党は政費節減(行政費削減)・民力休養(地租軽減)を掲げて反対しました。立憲自由党は豪農(地主)が支持基盤で、彼らによる地租軽減の主張を代弁したのです。

 

このような対立は、〔第1次松方正義内閣1891~92〕の第2・第3議会(その間の第2回総選挙では品川弥二郎内相による民党への選挙干渉があった)でも同様でしたが、〔第2次伊藤博文内閣1892~96〕の第4議会では、明治天皇が政府と帝国議会の協力を求めた建艦詔勅[けんかんしょうちょく](和衷協同の詔書[しょうしょ])を発し、軍拡予算が成立しました。

 

第5・第6議会…自由党は政府と手を組むも、立憲改進党は条約改正に反対し対立

のち、自由党(立憲自由党が改称)は政府に協力して政治責任を分担することを自覚し始め、陸奥宗光外相による条約改正(外国人の内地雑居を認める代わりに治外法権の撤廃を獲得)に賛成しました。伊藤首相も、衆議院第一党の自由党と協力したスムーズな議会運営を望んだのです。

 

ところが、立憲改進党は吏党(与党)に接近して対外硬派連合を結成し、欧米資本の侵入をもたらす内地雑居に反対して現行条約励行(外国人に開港場居留地への居住を続けさせる)を唱えました。

 

立憲改進党は都市商工業者が支持基盤で、彼らによる内地雑居反対の主張を代弁したのです。この対立は、日清戦争開始(1894)まで続きました。

 

出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋
[図表6]1890年代の東アジア(略地図) 出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋

 

 

山中 裕典

河合塾/東進ハイスクール・東進衛星予備校

講師

 

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※本連載は、山中裕典氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる日本史

大人の教養 面白いほどわかる日本史

山中 裕典

KADOKAWA

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