(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今、米国の通貨である「ドル」の信頼が揺らいでいるとの論評が目立つようになりました。しかし、日銀出身のCFP・小松英二氏は、世界の基軸通貨としての「米ドル」の信頼・優位性は圧倒的であり、今後も当面は揺らぐことはないとみます。なぜか。小松氏の著書『はじめての金利×物価×為替の教科書』(ビジネス教育出版社)から、一部抜粋して紹介します。

米ドルの「準備通貨」という側面

米ドルには、貿易の資金決済や金融取引といった日常的な取引以外でも、準備通貨といった側面もあります。各国通貨当局(政府および中央銀行)の外貨準備における通貨シェアは、米ドルは約6割、ユーロは約2割、円は約6%、ポンドは約5%(2021年、国際通貨基金調べ)です。米ドルは他を圧倒しています。

 

外貨準備の保有は、為替レートの急変動を抑制して貿易取引を円滑にすること、経済危機などの事態に備えることなどが動機ですが、信頼感と利便性から米ドルが選ばれています。

 

こうしたドルの特性は、「有事のドル買い」につながります。

 

大規模な戦争、パンデミック、世界中に連鎖する金融・経済危機などで経済・社会が混乱すると、多くの金融機関は「ドル買い」に向かいます。米ドルは世界中で決済通貨として使われているため、とりあえず手許の流動性を確保するためです。

 

不安心理が広がると信用不安(金融機関の信用力が低下し、金融機関同士で資金を融通し合わなく状態)に発展することもあります。

 

資金の出し手は信用不安が広がると、なかなか米ドル資金を出さなくなります。一方、資金の受け手(資金調達側)は、より高い金利を示さないと米ドルが調達できなくなります。

 

米ドル資金の需給が極端にタイト化して、米ドルは急上昇します。

ドル以外の通貨同士の交換レート「クロス・レート」

外国為替取引の中心は「米ドルとそれ以外の通貨」との取引です。しかし、「それ以外の通貨」同士でも外国為替取引は行われます。「ユーロ/円」、「ユーロ/ポンド」、「ユーロ/スイスフラン」など、米ドル以外の通貨間の交換レートを「クロス・レート」といいます。

 

さらに、クロス・レートのうち、「ポンド/円」や「スイスフラン/円」など、一方が円である為替レートを「クロス円レート」と呼びます。

 

理解を深めるため、クロス円レートの計算方法を説明します。クロス円レートの計算方法は、対象通貨の「対ドルレート」を「掛ける」ことで計算できる組み合わせと、対象通貨の「対ドルレート」を「割る」ことで計算できる組み合わせがあります。

 

◆対象通貨が「外国通貨建て」の場合

「外国通貨建て」とは、自国通貨1単位に対して外国通貨がいくらかを表示する慣行のことです。たとえば、英国の場合は「1ポンド=△△ドル」と表示します。

 

【ポンド/円レートの計算例】

ドル/円レート:1ドル=130円、ポンド/ドルレート:1ポンド=1.23ドルの場合

⇒1ポンド≒〔1.23(ドル)×130(円)〕≒160円

 

◆対象通貨が「自国通貨建て」の場合

「自国通貨建て」とは、外国通貨1単位に対して自国通貨がいくらかを表示する慣行のことです。たとえば、スイスでは「1ドル=○○スイスフラン」と表示します。

 

【「スイスフラン/円」レートの計算例】

ドル/円レート:1ドル=130円、ドル/スイスフランレート:1ドル=0.9スイスフランの場合

⇒1スイスフラン≒〔130(円)÷0.9(スイスフラン)〕≒144円

 

クロス円レートの計算方法を確認しましたが、米ドルを介在させることによって成り立っています。

 

もちろん、円が関係しないクロス・レートについても、各通貨の「対ドルレート」がわかれば計算できます。すべて米ドルの介在で成り立っており、ドルが世界の基軸通貨であることを示しています。

 

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