圧倒的な経済力・軍事力が支える「米ドル」の基軸通貨体制
日本経済は米国との貿易によって大きく発展してきました。日本にとって米ドルは、身近であり、貿易に欠かせない通貨です。対米貿易だけでなく、アジア諸国との貿易決済にもドルを用いることが少なくありません。
財務省「貿易取引通貨別比率」<2022年下半期>によれば、日本が輸出代金を米ドルで受け取る割合は約52%、輸入代金をドルで支払う割合は約73%にも上ります。
こうした事情から、日本での外国為替取引の中心は円と米ドルの交換となり、「ドル/円」レートが最も注目されます。
実は、日本に限らず世界のほとんどの国においても、自国通貨と米ドルの交換が中心となっています。それは米ドルが通貨のなかで最も信頼性が高く、広く使われている「基軸通貨」だからです。
基軸通貨とは何かを説明します。国際的に定められた定義はありませんが、一般的に、次の3つが基軸通貨の条件といわれています。
【基軸通貨の条件】
・国際的な金融取引における決済通貨として使われていること
・人々の価値基準として認識される通貨であること
・外貨準備に使われていること
これら3条件を揃えている必要がありますが、さらに通貨発行国の経済力・規模、政治力、軍事力なども決め手となります。高度に発達した金融市場や外国為替市場の存在、対外取引規制がないことなどを含め、これら要件に適合する通貨、それが米国の通貨であるドルなのです。
第二次世界大戦前までは、大英帝国の繁栄を背景に英国のポンドが基軸通貨でしたが、戦後は「ドル基軸通貨体制」となり現在に至っています。
米ドルが基軸通貨となるポイントとして、米国は世界のGDP(国内総生産)の2割強を占める最大の経済大国であること、米国は最強の軍事力を有する国であること等が挙げられます。
戦争やテロが起きても、米国ならダメージは少なく、簡単には米ドルの価値は下がらないだろうというわけです。
信頼感と利便性から外貨準備として選ばれる「米ドル」
このところ米ドルの信頼が揺らいでいるとの論評が目立つようになりました。しかしながら、依然として米ドルの取引量は外国為替市場全体の44%を占めます([図表1]参照)。
また、「米ドル/円」、「ユーロ/ドル」、「英ポンド/ドル」などのようにドルを介する外国為替取引は、世界の為替取引全体の8割を越え、他の通貨を圧倒しています。
米国とは関係のない2国間の取引、たとえば日本がサウジアラビアやカタールなど中東から原油を輸入する取引もドル建てで行われています。
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