(※写真はイメージです/PIXTA)

日銀の金融政策は「金利」を動かすことによって行われます。「金利」の変化は、経済にどのような影響を与えるのでしょうか。金利が「物価」「為替」「株価」に及ぼす影響について、かつて日銀で景気動向調査、金融業務、決済システムの開発に携わった経験をもつCFP・小松英二氏の著書『はじめての金利×物価×為替の教科書』(ビジネス教育出版社)から、一部抜粋して紹介します。

日銀の金利コントロールが「物価」に与える影響―金利低下は「物価上昇」につながる

金利は「物価」「為替」「株価」のそれぞれに影響を与えます。

 

はじめに、金利が「物価」に与える影響について説明します。実は、この「金利と物価の関係」は、日銀の金融政策の目的そのものです。

 

どういうことなのか。日銀の金融政策の目的は、「物価の安定を図ること」にあります。物価の安定は、経済が安定的かつ持続的に成長を遂げていくうえで不可欠な基盤であり、日銀はこれを通じて国民経済の健全な発展に貢献するという役割を担っています。このことは日本銀行法第1条に示されています。

 

「物価の安定を図ること」をかかげた日銀は、持続的な物価上昇(インフレ)や、反対に持続的な物価低下(デフレ)は好ましくない状態として金融政策を運営しています。

 

そして、物価の安定のための手段として有効なものの一つが、「金利」を必要に応じて低くしたり高くしたりすることなのです。

 

日銀の2010年以降の金融政策は、「デフレからの脱却」を至上命題とした「低金利政策」です。日銀は、企業の成長と国民の暮らしの向上に必要な物価上昇率の目標を前年比「2%」と定めて、大規模な金融緩和を続けています。

 

金利を起点とした物価への影響は、金利を上昇させると持続的な物価上昇(インフレ)が抑制される、反対に金利を低下させると持続的な物価低下(デフレ)が抑制される、とまとめられます。

 

【日銀の金利上昇・低下が物価に与える影響】

・日銀が金利を低下させる⇒持続的な物価「低下」(デフレ)を抑制される

・日銀が金利を上昇させる⇒持続的な物価「上昇」(インフレ)を抑制される

 

金利上昇や金利低下といった日銀による金利コントロールの中身を、物価への働きかけといった視点でもう少し詳しく説明します。

 

◆日銀による金利低下が「景気浮揚」や「デフレ抑制」につながる理由

まず、日銀が金利を低下させた場合に、「景気浮揚」「デフレ抑制」につながるしくみについて説明します。

 

日銀が金融機関同士で短期の資金を貸し借りしているコール市場の金利(コール金利)を引き下げたとします。金融機関は、低い金利で資金を調達できますので、企業や個人に対する貸出金利を引き下げることができます。

 

金融市場は互いに影響し合うので、金融機関の貸出金利だけでなく、企業が社債発行により債券市場から直接資金調達をする際の金利も低下します。これにより企業は、運転資金(従業員への給料の支払いや仕入れなどに必要な資金)や設備資金(工場や店舗建設など設備投資に必要な資金)の調達が容易になります。

 

個人も、たとえば住宅購入資金を借りやすくなります。このように経済活動が活発となり、景気を上向かせる方向に作用し、物価に押し上げ圧力が働きます。こうした金融政策は「金融緩和政策」と呼ばれます。

 

◆日銀による金利上昇が「景気加熱の抑制」や「インフレ抑制」につながる理由

次に、日銀が金利を上昇させた場合に「景気加熱の抑制」や「インフレ抑制」につながる理由について説明します。

 

日銀がコール金利を引き上げたとします。金利が上昇すると、金融機関は以前より高い金利で資金調達しなければならないので、企業や個人への貸出金利を引き上げます。

 

そうなると企業や個人は、資金を借りにくくなります。経済活動は抑制されて、景気の過熱が抑えられることになります。企業や個人が経済活動を抑えると、物価は全体的に下がることになるわけです。

 

このように景気過熱やインフレを抑える金融政策は、「金融引き締め政策」と呼ばれます。

 

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