「安全性確保」のレベルをどこまで求めるか
このように、ライドシェアは現状では、違法タクシーである「白タク」と同じ扱いになってしまいます。また、現時点でライドシェアに類似する制度として例外的に認められている「自家用有償旅客運送」も、タクシー事業ほどではないにしても、厳しい基準がおかれています。その主眼は、利用者の安全の確保にあります。
ライドシェアを認めるべきかどうかという議論には、2つの観点があります。
第一の議論は「経済合理性の観点」です。たとえば、タクシーが不足している、過疎地や観光地等での交通手段が必要である、シェアリングエコノミーを促進すべきである、などということです。
第二の議論は「法的な観点」です。複数の問題点が考えられますが、なかでも最も重要なのは、利用者の安全を十分に確保しなければならないということです。
ここで考えなければならないのは、現行法が「自動車で有償で人を運ぶ」という行為について、なぜ、上述したような厳しい規制を敷いているのかということです。
どのような規制にするかを決める場合、安全性を追求すればきりがないので、どこかで線引きせざるを得ません。その場合、どこで線を引くかというのは価値判断によらざるを得ません。
そして、現在の規制のあり方の背景には、利用者の安全性を十分に確保するには、ここまでの厳しい規制をおく必要があり、それが一般国民の常識的な考え方と整合しているという価値判断があります。
ライドシェアは一般人がドライバーとしてサービスを提供するものなので、安全性の確保には限界があります。
もちろん、ライドシェアにおいても、ドライバーにタクシー会社等の研修を定期的に受けるよう義務付けたり、利用者にドライバーを評価させたり、自動車保険(任意保険)への加入を義務付けたりすることは、ある程度役立つかもしれません。しかし、タクシー業者やタクシードライバーと同等の規制に服させるのは明らかに無理です。また、保険はあくまでも安全性が損なわれ事故が起きてしまった場合のセーフティネットにすぎません。
さらに、現行法上例外的に認められている「自家用有償旅客運送」のような制度設計も難しいといわざるを得ません。
そうだとすれば、ライドシェアの導入を検討する場合には、求められる安全性の程度についてどこで線引きをするのか、タクシーや公共交通機関よりも安全性が低い点については自動車保険で事後的にカバーすると割り切るのか、といった価値判断を含む論点について、踏み込んだ議論が行われなければならないといえます。
荒川 香遥
弁護士法人ダーウィン法律事務所 代表
弁護士
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