「老後のためには自助努力が必要」と理解する人、多数だが…
物価の高騰が止まらないが、給与の伸びは全く追い付かず、さらに貧しさを加速させている日本。給与をもらっているサラリーマンたちは、もはやあきらめの境地だ。一生懸命働いてなんとかギリギリの生活を維持し、その後は少ない年金で、どうにかやりくりして一生を終える。多くの日本人が描くライフプランは、このようなものではないか。
実際、公益財団法人生命保険文化センター『2022(令和4)年度 生活保障に関する調査』によると、「老後に求める生活水準」として「つつましい生活」が63.9%最も多い。「(現役時代と)同じ程度の生活」が26.5%、「経済的に豊かな生活」に至っては2.3%とごくわずかだ。
「老後の夫婦、生活を送る上で考えられる最低日常生活費」について聞くと、最も多いのは「20万~25万円未満」で27.5%。「30万~40万円未満」が18.8%、「25万~30万円未満」が14.4%と続き、平均額は月23.2万円だった。
「経済的にゆとりのある老後生活のための上乗せ額」として、最も多かったのが「10万~15万円未満」の31.4%、2番目が「10万円未満」の19.3%。平均は月14.8万円となった。
「必要最低費+上乗せ額」は夫婦で月37.9万円(サンプルごとに合計した値の平均値)となり、この金額なら、経済的にゆとりのある老後生活が可能ということだろう。
公的年金だけで老後の生活費を賄えるのが理想だが、同調査によると「老後の日常生活費は公的年金で賄えると思っているか」の問いに対し、「賄える」は23.2%に過ぎず、8割弱が「賄えない」と考えていることがわかる。
政府によるPRが奏功し、国民には広く「老後、生きていくためには自助努力が必要」という考え方が浸透した。それもあってか「公的年金の充実のために今よりも高い保険料や税金を払うよりは、自助努力で準備していきたい」と考えている人が半数以上にのぼっている。
やるべきことはわかっていても、着手できない無念
では、実際に老後への準備はどのくらい進められているのだろうか? 同調査の「あなたは、ご自身やご家族の将来をどのようにしたいか、そのための経済的な準備をどうしたらよいかといった、 具体的な生活設計を立てていますか」との問いに、「生活設計あり」と回答したのは、39.9%と4割程度だ。
また「生活設計を立てていない理由」のトップは「将来を見通しづらいから」が25.8%、「経済的余裕がないから」が23.1%。
自助努力が必要なことは理解しつつも、先立つものがないため着手できないという人が、すでにこんなに増えている。世代別では、「経済的余裕がない」を理由とする人の割合が最も高いのは50代だった。この世代には、子どもの教育費やローン返済、親世代の介護問題等がのしかかり、自分の将来にまで手が回らないのかもしれない。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、日本人(平均年齢43.7歳)の平均給与は月31.1万円。手取なら23万~25万円程度だ。50代前半では月36.4万円、50代後半では37.0万円。手取りにすると27万~29万円程度。50代は収入面が最も高くなるタイミングだが、諸々の支出も山場を迎えるといったところか。
では、将来もらえる年金はどの程度かというと、厚生年金受給者で平均月14万5,372円(厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』より)。これはかなり厳しい数字だ。
自分の将来が公的年金に頼れないことは重々理解しているにもかかわらず、さまざまな問題に押しつぶされ、自助努力以前の段階で、ひたすらもがいている状態。これが、現在の日本の中高年世代の実情だ。
十分な資産形成ができないまま、目先のお金のやりくりと日々の仕事に追われ、オタオタしている間に年を取り、定年を理由に会社組織の外に押し出される。これから現役時代と同等の給与の仕事にありつける可能性は低く、手元にある現預金もごくわずか。それなのに、老親の介護費用や子どもたちの学費はまだまだ必要…。
「老後のためにやるべきこと」は痛いほどわかっていても、それに着手できない無念。そんなつらい状況をこのまま放置していいのか。これは、日本の社会システム全体の由々しき問題だ。解決のためには、すべての人が「自分ごと」として考え、対策に取り組むことが重要だといえる。
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