(※画像はイメージです/PIXTA)

一般のドライバーが自家用車を用いて有償で人を運ぶ「ライドシェア」について、日本で導入すべきかが議論になっている。現状、日本ではライドシェアについてどのような法規制が敷かれているのか。また、今後、もしも日本でライドシェアの導入を検討するならばどのような問題点が生じるのか。弁護士の荒川香遥氏(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に聞いた。

ライドシェアとは

ライドシェアは、一般人が、自家用車を使ってお金をもらって人を運ぶサービスをさします。海外ではアメリカや中国、東南アジアで広く普及が進んでおり、それらの国では、Uber(アメリカ)、DiDi(中国)等の仲介業者が、利用者とドライバーをスマートフォンのアプリでマッチングする形がとられています。

 

日本では、後述するように、ライドシェアは法令によって禁止されています。しかし、最近、日本でもライドシェアを導入するべきかが議論になっています。背景には、タクシー不足が深刻化していることと、成長戦略としていわゆる「シェアリングエコノミー」を促進しようという動きがあります。ただし、ニーズがあるかどうかと、解禁してよいかどうかは、別の問題です。

日本の現行法では?

日本では、ライドシェアは法令によって禁止されています。なぜなら、道路運送法78条が、原則として自家用自動車を「有償で運送の用に供してはならない」としているからです。無許可営業のタクシーである「白タク」と同じ扱いがされます。


タクシー事業を行う場合、法令による厳しい規制を受けます。

 

たとえば、タクシー事業に新規参入するときには原則として国土交通大臣の許可を受ける必要があります。料金も認可制です。

 

また、営業所ごとに国家資格を有する「運行管理者」をおいてドライバーの勤務時間の適正管理、健康状態・体調の把握、指導監督をさせるなど、走行の安全を確保できるようにしなければなりません。さらに、車両の点検整備は毎日行わなければなりません。なお、個人タクシーの場合は、これらをすべてドライバー自身で行わなければなりません。

 

ドライバーは「二種免許」という専用の免許を取得した人でなければなりません。

 

この他にも、事業者・ドライバーが守らなければならない数多くのルールがあります。いずれも、安全性を確保するためのものです。もちろん、事故が起きてしまったときに備え「タクシー共済」という自動車保険のような制度もあります。

過疎地等での「自家用有償旅客運送」

ライドシェアは日本では原則として禁止されていますが、一つ、参考になる制度があります。過疎地等で2018年から行われている「自家用有償旅客運送」です。

 

これは市町村、NPO法人等が、地域住民、観光旅客等の運送を行うものをいいます(道路運送法78条3号)。主に、バスやタクシーが十分に機能していない過疎地で、地域住民や観光客の移動手段を確保するために、例外的に「有償で運送の用に供する」ことが認められているものです。

 

ただし、有償とはいっても、担い手が市町村やNPO法人等であることからわかるように、あくまでも非営利です。また、厳格な規制がおかれています。

 

まず、国土交通大臣の登録を受けなければなりません。その前提として、「地域における関係者の協議」で、地元のバス・タクシー事業者がサービスを提供することが困難であることについて協議が整わなければならないなど、きわめて厳しい条件があります。

 

利用者が支払う対価についても、ガソリン代や人件費等の実費の範囲内で、かつ明確に定められていることが要求されています。

 

さらに、運転者は所定の講習を受けなければならず、一定程度の運行管理や整備管理の体制も備えていなければならないなど、安全性確保についてはタクシー事業に準じる相応に厳しいルールがおかれています。

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