結婚を考えるカップルや新婚の共働き夫婦で、将来的には子どもや住まいについて考えているが、具体的な計画が不足している、という方も多いでしょう。FPコンシェル株式会社代表取締役でFP兼マネーコンシェルジュである福本眞也氏の著書『お金は「金利」で増やすのです』(大和書房)より、一部抜粋して紹介する本連載。今回は、一般的な生活費や賃貸住宅事情などを考慮し、夫婦の資産構築戦略を具体的な事例を通じて分かりやすく解説します。
将来的に子ども2人とマイホームを望む新婚夫婦
夫Bさん(29歳)、妻Cさん(31歳)。賃貸マンション暮らしで共働き。世帯年収900万円。貯金80万円。
Q:結婚したばかりで、あまり貯金がありません。将来的には子どもが2人欲しいですし、マイホームも考えています。収入は平均的だと思いますが、どのように資産を形成していけばいいでしょうか。
〈POINT〉
・iDeCoで老後資金、保険で学費を貯める
・NISAでJ-REIT、株式の投資信託を買う
教育資金を念頭に置いた資産形成を
世帯年収は900万円ありますが、1人ずつで見ると、ほぼ全国平均です。しかし、貯蓄は平均より少なく、将来の養育費や教育費、そしてマイホーム資金を考えると、まず貯蓄を確実に増やす必要があります。BさんとCさんがそれぞれ450万円ずつ稼いでいると仮定すると、社会保険料、所得税、住民税などを控除した手取り収入は、それぞれ約350万円になります。つまり、世帯での手取りは700万円ですね。
総務省統計局「家計調査家計収支2人世帯:世帯人員別1世帯当たり1ヵ月間の収入と支出」によると、2人世帯の平均消費支出は約22万円(家賃除く)、4人世帯の平均消費支出は約29万円(家賃除く)となっています。BさんとCさんの場合は2人ですので、年間では(22万円×12ヵ月=)264万円になります。
2人は賃貸住まいとのことですから、家賃の全国平均約6万円を採用します。2人暮らしで家賃が6万円であれば、それほど広くはないかもしれませんが、人気のエリアを外せば十分に1LDKくらいの物件を探すことができると思います。
家賃を含めると、年間の総支出は(264万円+6万円×12ヵ月=)336万円。手取りは700万円ですから、年間(700万円−336万円=)364万円、つまり月に30万円ほど貯蓄にまわすことができそうです。 将来的に子どもが2人欲しいということですので、教育資金を頭に入れながら貯蓄と運用を考えていきたいと思います。
投資は、コア部分とサテライト部分を分けて考えることが大事です。特にコア部分では投資の基本である、長期・積立・分散を意識した投資をします。
Bさん・Cさん夫婦の場合、次のように考えました。
・コア部分:iDeCoで老後資金と保険で教育資金、投資に慣れたら新NISAを活用
・サテライト部分:一般NISAと新NISAでJ-REIT、株式投資信託
老後資金は現実的に、コア部分で貯めていく
コアの部分は、iDeCoを活用します。夫婦それぞれ月2万円ずつ掛けていきましょう。
0.1%の金利(利息)で年金を積み立てていけば、結果は次のようになります。年間の節税額は、(所得税1万5,600円+住民税2万4,000円=)3万9,600円で計算しました。
夫Bさんの31年後(60歳)の運用シミュレーション
積立元本……毎月2万円×12ヵ月×31年=744万円
金利(利息)による運用益……約11万円
節税総額……3万9,600円×31年=約122万円
総額(31年後)……744万円+11万円+122万円=約877万円
妻Cさんの29年後(60歳)の運用シミュレーション
積立元本……毎月2万円×12ヵ月×29年=696万円
金利(利息)による運用益……約10万円
節税総額……3万9,600万円×29万円=約114万円
総額(29年後)……696万円+10万円+114万円=約820万円
2人あわせると、(877万円+820万円=)1,697万円になります。十分とは言えないかもしれませんが、会社の退職金や厚生年金を考慮すると、老後の不安は少なくなるのではないでしょうか。
もう少し積極的に運用したい方は、Aさんのところで紹介した外国債券の投資信託や外国株式の投資信託を考えてみるといいでしょう。