短期金利は長期金利よりも低いのが一般的だが…
短期金利は長期金利よりも低いのが一般的です。借りる期間が長くなると、余分に支払うお金が多くなるのは当たり前ですね。金利とは、ある意味でお礼のようなものですから、長く借りれば借りるだけ、感謝の気持ちとお礼も大きくなるのが普通です。
短期から長期へ向かって、それぞれの金利(利回り)を結んだ曲線を「イールドカーブ」と言い、長期金利が短期金利よりも高くなる右肩上がりの形状が通常の状態で、「順イールド」と言います。
ところが、短期金利が長期金利よりも高くなることがあります。この現象を、「逆イールド」と言います。下図1を見てください。先述したように通常は、借りる期間が長くなるにつれて金利が高くなるので、右肩上がりのカーブを描きます。ところが逆イールドでは、右肩下がりのカーブになっています。
なぜ、このような現象が起こるのか。インフレ率が高くなりすぎると、中央銀行は政策金利を引き上げます。それでも高インフレ状態が続くと政策金利を継続的に引き上げます。
その結果、短期金利は高いままなので、企業や個人はお金を借りにくくなり、やがては経済活動が鈍化していきます。専門家や金融機関などの市場参加者は中央銀行が意図するタイミングよりも先に景気減速を予想し、長期金利が下がります。つまり市場関係者の多くが将来の景気に不安を感じている状況です。「このままでは景気は後退するだろう」と考えているため、未来の景気である長期金利が下がるのです。
「景気が悪い、もしくは良くない」ときのイールドカーブの形状
他のパターンも見てみましょう。順イールドには大きく分けて2パターンあります。
①景気が拡大基調にあり、短期から長期まで金利が上昇している(右肩上がり、図2)。
②景気が減速もしくは後退すると予想され、短期も長期も低金利(平らになっている、図3)
つまり、景気後退の兆候を知るためには、イールドカーブの形状を見ればいいわけです。逆イールドの形状になっていないか、イールドカーブが平らになっていないかをチェックすればいい、ということですね。
図3は日本の今年4月時点のイールドカーブで、10年のところでカーブが落ち込んでいる異常な形状になっているのは、日銀の誘導が理由です。この形状が維持されている間は景気が良いとは言えませんので、日経平均株価が大きく上昇する可能性は低いと考えるべきです(長期のデフレで割安に放置されている株式銘柄の物色買いによる株価上昇はありえます)。
ただし、実際の景気よりもマーケットが先行する場合があり、日経平均株価が安定的かつ継続的に上昇する暁には、10年金利の異常な落ち込み形状は解消されていることでしょう。
福本 眞也
FPコンシェル株式会社 代表取締役
1級ファイナンシャル・プランニング技能士