(写真はイメージです/PIXTA)

日本銀行が10月12日に発表した企業物価指数によれば、2023年9月~契約通貨ベースの輸入物価指数(前月比)は12ヵ月ぶりのプラスとなりました。本稿では、ニッセイ基礎研究所の安田拓斗氏がその内容の詳細について解説します。

1. 国内企業物価指数(前年比)は伸びの鈍化が続く

[図表1]企業物価指数の推移

 

日本銀行が10月12日に発表した企業物価指数によると、2023年9月の国内企業物価の前年比は2.0%(8月:同3.3%)と9ヵ月連続で伸びが鈍化した。


内訳をみると23類別中、19類別が上昇し、4類別が低下した。飲食料品は前年比5.4%(8月:同6.1%)、石油・石炭製品は同3.2%(8月:同7.4%)とそれぞれ伸びが鈍化した。また、電力・都市ガス・水道は政府による電気・ガス価格激変緩和対策により前年比▲18.0%(8月:同▲11.5%)と3ヵ月連続でマイナスとなった。

 

国内企業物価の前月比は9月に▲0.3%(8月:同0.3%)と3ヵ月ぶりにマイナスとなり、夏季電力料金引き上げの影響を除くと2ヵ月ぶりにマイナスに転じた。

 

内訳をみると23類別中、14類別が上昇し、7類別が低下、2類別で横ばいとなった。化学製品は前月比0.6%(8月:同0.8%)と伸びは鈍化したが、プラスで推移している。一方、電力・都市ガス・水道が前月比▲2.4%(8月:同▲4.3)と5ヵ月連続でマイナスとなり、石油・石炭製品が同▲4.1%(8月:同5.1%)とマイナスに転じたことが全体を押し下げた。

 

[図表2]国内企業物価指数の推移 / 国内企業物価指数の前月比寄与度分解

 

石油・石炭製品がマイナスに転じたのは、9月7日からガソリン等の新しい激変緩和措置が実施されたためである。激変緩和措置は5月29日の週以降、補助率が引き下げられてきたが、新制度は168円から17円を超える分は全額支援し、17円以下の部分は10月4日まで30%、10月5日から12月31日まで60%支援する。

さらに、政府は9月使用分までとしていた電気・ガス価格激変緩和措置を、補助額を引き下げて12月使用分(翌年1月請求分)まで延長することを発表している。補助額の引き下げは9月使用分(10月請求分)からで、都市ガスが1㎥あたり30円から15円へ、電気が低圧は1kWhあたり7円から3.5円、高圧は1kWhあたり3.5円から1.8円へ引き下げられる。

2. 輸入物価(契約通貨ベース)の前月比は12ヵ月ぶりのプラス

[図表3]輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース)

 

2023年9月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比0.6%(8月:同▲0.2%)と12ヵ月ぶりにプラスに転じた。また、2023年9月の円相場(対ドル)は前月比2.0%とプラスとなったことで、円ベースでは同2.1%(8月:同1.7%)と2ヵ月連続でプラスとなった。円ベースの前年比は▲14.0%(8月:▲11.4%)と6ヵ月連続でマイナスとなった。

契約通貨ベースで輸入物価の内訳をみると、10類別中4類別でプラス、2類別で横ばい、4類別でマイナスとなった。飲食料品・食料用農水産物は前月比▲0.5%(8月:▲0.2%)と6ヵ月連続でマイナスとなった。一方、石油・石炭・天然ガスは前月比2.4%(8月:同▲0.3%)11ヵ月ぶりにプラスに転じた。

円ベースでみると、9月の輸入物価は原油価格が上昇し、円安が進行したことで前月比が2ヵ月連続でプラスとなった。

3.今後も国内企業物価指数(前年比)は伸びが縮小

[図表4]国内企業物価指数の前年比寄与度分解

 

国内企業物価指数(前年比)は9ヵ月連続で伸びが鈍化し、2%台となった。円ベースの輸入物価は、原油価格が上昇し、円安が進行したことから、前月比は2.1%と2ヵ月連続でプラスとなり、今後もプラスを維持する公算が大きい。

物価上昇圧力は残っているが、国内企業物価指数(前年比)の先行きは前年の高い伸びの裏がでることもあり、伸びが縮小するだろう。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月12日に公開したレポートを転載したものです。

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