1. 結果の概要:前年比で6%台に上昇
10月11日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
・前年同月比は6.00%、市場予想1(5.90%)より上振れ、前月(5.15%)から上昇(図表1)
・前月比は0.87%、市場予想(0.75%)より上振れ、前月(0.28%)から上昇
【コア指数2(23年9月)】
・前年同月比は4.59%、前月(3.95%)から上昇した(図表2)
・前月比は0.92%、前月(0.75%)から上昇した
1bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。
2. 結果の詳細:前月比伸び率が急上昇
9月のロシアのインフレ率は前年比で6.00%となり、8月の5.15%から上昇した。5か月連続で上昇し、ベース効果で3月以降の伸び率が低下して以降では最も高い伸び率となった。ロシア中銀のインフレ目標(4%)は3か月連続で上回ったことになる。
なお、ルーブル下落やインフレ圧力の高まりを受けて、ロシア中銀は8月15日の臨時会合を含めて、7月以降で政策金利を5.50%ポイント引き上げている(7.5%→13.0%)。
インフレ率を大分類別に見ると、9月の前年比伸び率は食料品が4.87%、財(非食料品)が4.56%、サービスが9.66%となっている。食料品および財は6月には前年比0%台であり、足もとで急上昇している。サービス物価の伸び率は10%前後の高い伸び率が維持されている。
前年比寄与度ではサービスが2.6%ポイント程度、食料品と財(非食料品)がそれぞれ1.6%ポイント程度となっており、9月のインフレ率の上昇は食料品と財が押し上げている(図表1)。
9月の前月比伸び率は、総合指数で0.87%、コア指数で0.92%となった。総合指数・コア指数ともにコロナ禍前の標準的な上昇率を上回り、いずれもウクライナ侵攻直後に見られた急上昇後では、最大の伸び率となっている(例えば2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35%、コア指数が約0.30%、図表3)。
前月比伸び率を大分類で見ると食料品が0.86%、財(非食料品)が1.09%、サービスが0.61%となり、財が伸びをけん引している。
別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では最新の10月9日時点の前週比で0.24%となっている(図表4)。
ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、9月で11.7%となり、3か月連続で上昇した。期待インフレ率と実際のインフレ率との関係は過去とほぼ同様の状況となり(期待インフレ率≒前年比インフレ率+6%)、足もとではやや加速している(図表5)。
品目別の上昇率を見ると3(図表6)、9月は前年比で海外旅行サービス(40.38%)、青果物(25.87%)、その他サービス(23.25%)の伸び率が高い。一方、テレビ(▲12.36%)、穀物・豆(▲11.28%)、植物油(▲6.77%)の下落が目立つ。
前月比では、卵(7.83%)、教育サービス(6.43%)、就学前教育サービス(3.48%)、肉(2.86%)、植物油(2.74%)の上昇率が相対的に大きく、健康増進サービス(▲4.01%)、その他サービス(▲2.19%)、旅客サービス(▲1.38%)が相対的に大きく下落した。
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は青果物(1.08%ポイント)、住居・公益サービス(0.90%ポイント)、肉(0.52%ポイント)、ガソリン(0.44%ポイント)、その他サービス(0.34%ポイント)、家庭サービス(0.32%ポイント)、海外旅行サービス(0.29%ポイント)だった。一方、穀物・豆(▲0.07%ポイント)は前年比でのマイナス寄与が相対的に大きい。
前月比上昇率の寄与では肉(約0.13%ポイント)、ガソリン(約0.09%ポイント)、教育サービス(約0.07%ポイント)、通信サービス(約0.06%ポイント)の押し上げ寄与が大きく、その他サービス(約▲0.03%ポイント)、旅客サービス(約▲0.03%ポイント)は押し下げに貢献している。
なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む8月の前年比上昇率寄与を見ると、乗用車なども物価を押し下げているが分かる(図表9)。
3大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
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