景気と金利の関係
よく「お金の量をジャブジャブにする」という表現を聞きますが、それは金利を極端に低くして(場合によってはマイナスにして)、市場にたくさんのお金を投入することです。企業がそのお金を使って新しい投資を行い、悪くなった経済を活性化させてくれるだろう、という金融政策です。金融政策とは、日本銀行(以下、日銀)が物価や経済の安定のために金融面から行う政策です。ここで大きなポイントが出てきました。
景気が悪くなれば、金利が下がる。
世の中の景気が悪くなると、たくさんのお金を借りてもらって投資をしてもらいたい。また個人で言えば、いろいろと消費してもらいたい。そのためには金利を下げて、お金をいっぱい使ってもらうように促します。
逆に、景気が良い場合はどうでしょうか。景気が良いということは、みんなお金に余裕が生まれるので、旅行に行ったり贅沢品などのモノを買ったりするようになります。つまり需要が増えるので、モノの値段が高くなる。要するに、物価が高くなるということです。あまりにも物価が高くなると、インフレという現象が起きるので、それを抑制するために、日銀は金利を高くします。詳しくは本書で述べていきたいと思いますが、これだけは覚えておいてください。景気が良くなれば、金利が上がる。
金利というのは景気に左右されているわけです。つまり、金利を知れば知るほど、今の世の中がどのような状況にあるのかがわかります。それは、世の中のお金の動きがわかる、ということです。お金の動きがわかれば、効率よく自分の資産を築け、増やしていけます。どこに自分のお金を置いておけばいいか、逆にどこからお金を引き上げればいいかがわかるからです。
またお金の動きがわかるということは、どこに投資すればいいのか、どの市場に参入すればいいかなど、ビジネス感覚を磨くことでもあるので、あなたの仕事にも役立つに違いありません。
日本人の「金利」に対する意識
私は、先進国の中で、日本人ほど金利に疎い国民はいないと思っています。なぜなら、金利を意識しなくてもよかった時代が長かったからです。特にバブル景気と言われるころ、例えば住宅ローンの金利は7%や8%と、今から考えると信じられないほど高かったのですが、それ以上に物価が上がっていたために、高い金利を気にしなくても大丈夫でした。返済額よりも土地の値段(資産価値)のほうが高くなっていたからです。
しかしバブルが崩壊し、失われた20年、30年と言われるほど、日本の不景気が続いたことで、多くの人が金利の重要性にようやく気づき始めました。最初に気づいたのは経済学者など専門家であり、次は金融業界の人たちです。ところが、金融商品を販売している人たちは、あまり金利のことには触れずに、自分たちに都合のいい部分しか見せてこなかったという実情もあります。
自分たちが売りたい金融商品を無知な一般の人たちに売る。すべての販売会社がそうしてきたわけではありませんが、そういったところが少なからず存在するのも事実です。
私は、一般の方々にも金利のことをよく理解していただき、本当に賢い資産形成と資産運用を行ってほしいと願っています。それこそが日本の経済を活性化させることであり、日本の未来を明るいものにすると信じているからです。
世界の幸せのためには、一人ひとりの幸せが大事ですよね。まずは金利を学んで、お金の不安を取り除き、逆にお金を味方につけるようになってほしいと思います。
日本では長らく低金利が続いてきましたが、2022年から2023年にかけてアメリカ、イギリス、カナダやオーストラリア、そしてヨーロッパ各国も続々と政策金利を引き上げています。日本と同じようにマイナス金利政策を行っていたスイスもプラスに転じています。マイナス金利政策を継続しているのは、日本だけなのです。
日本で実際に金利が上がると暮らしはどうなるのか、資産はどうしたら増えるのか、本稿が考えるきっかけになれば幸いです。
福本 眞也
FPコンシェル株式会社 代表取締役
1級ファイナンシャル・プランニング技能士