(※写真はイメージです/PIXTA)

「年間110万円までの贈与は非課税」というルールを知っている人は多いでしょう。しかし、なかには「あえて110万円超の贈与を行い、贈与税を支払っている」人もいると、多賀谷会計事務所の現役税理士・CFPの宮路幸人氏はいいます。いったいなぜなのか、詳しくみていきましょう。

相続と贈与…それぞれの“税率の違い”を利用

贈与を行わなかった場合、相続税率と相続税額は下記のとおりです。

 

3億円-基礎控除4,800万円÷3人=8,400万円
相続税率:30%

相続税額:8,400万円×30%-700万円×3人=5,460万円

 

1.毎年3人に110万円ずつ5年間贈与した場合 

110万円×3人×5年=1,650万円で、この分相続財産が減ります。なお、贈与税額はかかりません。

 

この場合の相続税額は、

 

3億円-1,650万円-4,800万円÷3人=7,850万円

相続税率:30%


7,850万円×30%-700万円×3人=4,965万円

 

となります。したがって、毎年3人に110万円ずつ5年間贈与した場合、5,460万円-4,965万円=495万円の相続税額を減少させることができました

 

2.毎年3人に550万円ずつ5年間贈与した場合

550万円×3人×5年=8,250万円で、この分相続財産が減ることになります。かかる贈与税額は、550万円から110万円を引いた440万円に贈与税率20%がかかります(ただし、ここから控除額30万円が引かれます)。

 

したがって、贈与税額は

 

440万円×20%-30万円=58万円×3人×5年=870万円

 

となります。一方、相続税額は

 

3億円-8,250万円-4,800万円÷3人=5,650万円

相続税率:30%


5,650万円×30%-700万円×3人=2,985万円


となります。毎年3人に550万円ずつ5年間贈与した場合、贈与税は総額870万円支払うことになりますが、相続税額は5,460万円-2,985万円=2,475万円減額することができたため、総額1,605万円を節税することが可能です

 

パターン①よりも②のほうが結果的に節税できた、というのがおわかりいただけたのではないでしょうか。

 

まとめ:税制改正によりルール変更…専門家に相談のうえ対策を

今回紹介した「あえて贈与税を支払ってでも贈与をしたほうが節税できるケース」というのは、相続税と贈与税の“税率の違い”を利用した方法です。

 

ただし、毎年同じ額を贈与してしまうと、「計画された連年贈与」とみなされた結果「一括贈与」とされる場合もあります。

 

また、税制改正により2024年以降の生前贈与加算は3年から7年に徐々に延びていくという改正が行われたため、この生前贈与による相続税対策に対する歯止めがかけられることとなりました。したがって、実際に生前贈与を検討する方は、専門家等に相談のうえ行うようにしてください。

 

 

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

 

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