中国はもう成長しない…“賭け”を続けるドイツの行く末は
このように見てくるとドイツ企業の対中投資double down戦略は危険な選択であることがわかる。
ドイツ企業は対中投資の引き上げを、「Local for Local戦略(現地需要に現地生産で対応する)」と「中国ビジネスの絶縁(insulation)」で正当化しようとしているとWSJ※は報じているが、その論理には無理がある。
※ WSJ:The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)。米国最大の発行部数を誇る経済新聞。
上述したように、中国の自動車市場はもう成長しない、中国で生産が増えるとすれば、それは輸出圧力を強めるだけである。
また第二次世界大戦当時米国企業は、敵国に存在した海外子会社、たとえばドイツフォード、ドイツGM(オペル)を資本関係を維持しつつも、経営を本国から切り離しヒットラーに戦争協力させることで存続させた。
その米国企業に倣い中国ビジネスを本国から切り離すという戦略も意味をなさない。財産権に対するリスペクトがない共産党体制は、財産権を温存したヒットラーほど甘くはない可能性が濃厚である。そもそも中国においては利益を国外送金ができるかどうか、保証の限りではない。
いま中国の自動車輸出はブームであるがいずれ地政学の壁にぶつかるだろう。となると中国での生産体制を増強させているドイツ自動車会社は、墓穴を掘ることになりかねない。三菱自動車の損切戦略と、ドイツ自動車企業のDouble down(難平買い)戦略のどちらが賢明か、答えは単純ではない。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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