同一人物とは思えない…初めてのインタビューから約30年→ジョブズが「世界で賞賛を浴びるパブリックスピーカー」へ変貌を遂げたワケ

同一人物とは思えない…初めてのインタビューから約30年→ジョブズが「世界で賞賛を浴びるパブリックスピーカー」へ変貌を遂げたワケ
画像:PIXTA

世界最高のパブリックスピーカーとしても有名なスティーブ・ジョブズ。これまで基調講演のプレゼンテーションで伝説を築いてきたジョブズだが、1978年、若き日に初めてテレビインタビューに臨んだ時の彼の姿は、見ているとつらくなるほどのものだったという。本連載は、ハーバード大学デザイン大学院の上級リーダーシップ・プログラムで企業エグゼクティブ向けにコミュニケーションスキルを教える、コミュニケーション・アドバイザーのカーマイン・ガロ氏の著書『Amazon創業者ジェフ・ベゾスのお金を生み出す伝え方』(文響社)より、一部抜粋して紹介する。

スティーブ・ジョブズをカリスマ的スピーカーにした猛特訓

練習というのは、下手だからするのではない。上手だからこそさらに秀でるために練習するのだ。優れたコミュニケーターは、練習が重要であることを無意識のうちに知っており、練習のための時間をけっして惜しまない。

 

スティーブ・ジョブズは、私たちの時代の最高のビジネス・ストーリーテラーのひとりだった。彼の有名なプレゼンテーションは、共同作業の賜物だ。ジョブズは、彼が信頼を置くチームとともにメッセージを構築し、スライドを作成し、そして徹底的にリハーサルを繰り返した。

 

ベゾス同様、ジョブズもキャリアの初期から天性の能力を示してはいたが、基調講演のプレゼンテーションで伝説を築き、カリスマ的なスピーカーになるまでには、何年もかかっている。ジョブズはパブリックスピーキングの技術を伸ばそうと努力した。懸命に取り組んだ。ジョブズがダイナミックなプレゼンテーションのスタイルを身につけたのは、何年もかけて計画的に練習した結果だったのだ。

 

1978年、若き日のスティーブ・ジョブズが初めてテレビインタビューに臨んだ時の映像を見てみよう。衛星中継でのインタビューに向けて、スタジオのクルーが、ジョブズのために準備を進めている様子が記録されている。わずか1分36秒の映像だが、彼がどれほど緊張していたか、ひしひしと伝わってくる。ジョブズの行動には、極度の不安が表れている。いくつか例を挙げよう。

 

・床から天井、そして周囲の人々へと、視線を落ち着きなく頻繁に動かす。

 

・大きく息を吐きながら、「なんてことだ」と4度もつぶやいている。

 

・髪に手をやる。

 

・口を真一文字に結び、歯を食いしばりながらぎこちなく笑い、照明の下で目を細めながら顔を上げる。

 

・腰かけた椅子を左右に回転させる。

 

・ついには気分が悪いと言って、トイレの場所を尋ねる。

 

まったく落ち着きがなく、映像を見ているとつらくなるほどだ。それでも、コミュニケーションの専門家であれば、テレビインタビューを前に感じている明らかな不安にもかかわらず、ジョブズのパフォーマンスの中に、いくつかの強みを見出すことができる。

 

たとえば、ジョブズは緊張していたものの、はっきりとした言葉づかいで、歯切れよく、明快に話している。長々と話す代わりに、ずばりと要点を述べている。その時々の状況に合ったユーモアを披露し、声の調子も強い。

 

もし私がコーチとして当時のジョブズの指導にあたるとしたら、まずは彼自身がこれらの強みに気づくようにサポートするだろう。独自の強みのうえに、スキルを構築していくことができるからだ。これらの強みは実際、ジョブズを見事なストーリーテラーに変身させた。

 

次の表では、キャリアの早い時期に行われたインタビューを待つあいだに垣間見られたジョブズ強みをまとめている。

 

スティーブ・ジョブズの初期のプレゼンテーションに見られる強み

 

ジョブズは何年にもわたってプレゼンテーションを行い、そのために毎回リハーサルを繰り返した。そして彼は、世界の舞台で称賛を浴びるパブリックスピーカーへと変貌を遂げた。

2007年のスピーチでは

ジョブズのキャリアを早送りして、アップルの1998年から2007年にかけての基調講演の映像記録を見ると、かつて、カメラに映ることを恐れていたスピーカーと同一人物とはとても思えない。そわそわと気をもむ様子も、髪をくしゃくしゃにすることも、気ぜわしく体を揺らすことも、視線が泳ぐこともない。一方で、初期の頃の映像で目立った断定的な言葉づかい、ユーモア、声のトーンやテンポの使い分け、簡潔さといった天性の強みが発揮されている。

 

ジョブズは、2007年にiPhoneを発表し、史上もっとも魅力的で印象に残るビジネスプレゼンテーションを行った。ジョブズと、プレゼンテーションのデザインチームは、聴衆に情報を与え、聴衆を楽しませ、魅了する基調講演を準備した。ユーチューブにアップされたこの時の講演の動画再生回数は、8000万回を超える。

 

次の表は、ジョブズが、自分に備わっていた強みを、いかにプレゼンテーションの武器に変えていったかを示している。

 

スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションの強み──2007年のiPhone発表時のプレゼンテーション
スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションの強み──2007年のiPhone発表時のプレゼンテーション

 

2007年のiPhone発表のプレゼンテーションは、落ち着きなく不安気なスピーカーとしてのジョブズの姿が見られた1978年のテレビインタビューから、約30年後に行われたものだ。

 

メッセージの作成とプレゼンテーションのリハーサルに不断かつ重点的に取り組んだことではじめて、世界でもっとも驚嘆に値するコーポレート・ストーリーテラーに成長したのだ。本物のカリスマスピーカーになるための鍵は、自分を変えることではない。あなただけの特性を大事にしよう。自分の強みと能力を大切にしよう。誰しもが持っている不変の資質だ。それを土台にして、スキルを構築していこう。

 

メッセージと練習、磨きをかけていくことのできるこの2つの変数のために、努力を惜しんではならない。この2つに投資すれば、あなたは素晴らしいコミュニケーターになれるだろう。約束する。優れたコミュニケーターは、練習に時間をかける。なぜなら、優れたコミュニケーターを作り出すのは、練習に費やした時間だから。ガロAMPモデルを活用してプレゼンテーションを強化すれば、その結果に感動するはずだ。

 

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