10月からスタートする政府の「支援強化パッケージ」とは
以上をふまえ、政府がどのように対処しようとしているのか、9月27日に発表された「年収の壁・支援強化パッケージ」の中身を紹介します。
◆社会保険料の「106万円の壁」への対策
まず、106万円の壁については、事業者が、106万円の壁を越えた労働者の手取りが減らないようにする対策をとった場合、労働者1人当たり最大50万円の助成金を支給するというものです。
手取りが減らないようにする対策としては、給与の額を上げる方法、または、社会保険料を肩代わりする方法のいずれかが考えられます。
このうち、社会保険料を肩代わりする方法については、そのお金を「給与」扱いにするとそこに社会保険料がかかってしまうという問題があります。そこで、「社会保険適用促進手当」と名付けられ制度化されることになりました。
すなわち、事業主が社会保険料を肩代わりした場合、その額は「社会保険適用促進手当」として、社会保険料の算定の対象外となります(社会保険料の算定の基礎となる「標準報酬月額」の計算から除かれます)。
◆社会保険料の「130万円の壁」への対策
次に、社会保険料の「130万円の壁」についてです。
年収が130万円を超えても、それが労働時間の延⾧等に伴う一時的なものであれば、連続して2年まで、配偶者の扶養にとどまることが認められるようになります。なお、その認定は保険者が行うことになりますが、事業者の証明書を添付すれば認定が迅速に行われるようにします。
◆企業の「配偶者手当」による「年収の壁」への対策
一般企業で配偶者の年収基準のある「配偶者手当」の制度を設けている場合には、これが「年収の壁」として事実上機能しています。これに対し、見直しを進めるよう働きかけるとしています。
見直しの例として、配偶者手当を廃止または縮小し、基本給や子どもへの手当を増額することが挙げられています。
残された問題
以上が、「年収の壁」の問題について政府が提示した対策の概要です。これらは「年収の壁」のうち、主に「社会保険料の壁」の緩和に重点を置いたもので、「年収の壁」の問題の抜本的な解決になるものではありません。政府も、深刻化する人手不足に対応するための「当面の対応」として位置づけています。
「壁」が制度として存在する以上、その内側と外側とのアンバランスの問題は残ります。2025年に予定されている年金制度改革において、本格的な見直しが行われることが想定されます。
また、別の観点からの問題として、物価が上昇してきているのに「壁」の額が変わっていないという問題もあります。物価が上昇すればより多くのお金を稼ぐことが必要になりますが、「壁」があるために働き控えをしなければならないということも起こりえます。
さらに、2023年10月からはすべての都道府県で最低賃金が引き上げられます。これにより、「壁」の範囲で働ける時間は減ることになります。
このように、税金、社会保険料にかかわる「年収の壁」については様々な問題があります。政府・国会がこれらの問題をどのように解決していくことになるのか、注目されます。
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