「老老介護」の厳しすぎる現状
内閣府『令和5年版高齢社会白書』によると、介護保険制度における要介護・要支援の認定を受けた要介護者等は、2020年で668.9万人。この10年で178.1万人増加した計算だ。高齢者人口は今後も増加の一途をたどることから、要介護者等もさらなる増加が予想される。
要介護者等を介護者する人だが、「同居人している家族」が54.4%、「別居している家族」が13.6%、「事業者」が12.1%であり、約7割を家族が担っている。また「同居家族」の8割は「配偶者」と「子」で占められている。
◆介護者の続柄
★同居家族:54.4%(363万人)
・配偶者:23.8%(159万人)
・子:20.7%(138万人)
・子の配偶者:7.5%(50万人)
・父母:0.6%(4万人)
・その他の親族(11万人)
★別居家族:13.6%(90万人)
★事業者:12.1%(80万人)
出所:内閣府『令和5年版高齢社会白書』より
※(かっこ)内数値は概算要介護者等数
では、介護する人の年齢はどれぐらいかというと、男女とも60代以上が半数近くを占めている。
介護者の4分の1が要介護者の配偶者であることを考えれば、ある意味当然だが「老老介護」のこれだけの増加を目の当たりにすれば、対策が急務なことは明らかだ。
◆年齢別にみる介護者
★男性
「~30代」2.5%、「40代」6.2%、「50代」18.8%、「60代」28.5%、「70代」21.1%
★女性
「~30代」0.9%、「40代」5.3%、「50代」20.1%、「60代」31.8%、「70代」29.4%
出所:内閣府『令和5年版高齢社会白書』より
老老介護を救うヘルパーにも「高齢化の波」が…
2020年、同居する主な介護者が1日に要する介護時間だが、半数が「必要なときに手をかす程度」ではあるものの、「ほとんど終日」という介護者も約2割いる。
高齢者の介護はほぼ100%、時間の経過とともに介護度が上がっていく。介護する人への負担は、毎日のように、身体的にも精神的にも重くなっていくのである。「老老介護」の場合は、状況はさらに厳しいといえるだろう。
そこで頼ることになるのが介護サービスだが、実はこれにも懸念点がある。
公益財団法人介護労働安定センター『令和4年度介護労働実態調査』によると、介護労働者の平均年齢は居宅介護支援が最も高く53.0歳、訪問系は48.6歳、居住系は48.0歳、施設系(通所型)は46.8歳、施設系(入所型)は44.3歳となっている。
介護労働者全体の16.5%は60歳以上で「60~65歳」が8.8%、「65~70歳未満」が5.0%、「70歳以上」が2.7%。また訪問系では「70歳以上」が3.1%、居宅介護支援では「70歳以上」が4.4%を占めている。
ある60代の女性介護者は語る。
「私は長男の嫁で、80代後半の主人の母を10年ほど自宅介護しています。姑は足腰が悪いのですが、見ての通り大柄で、認知症も患っています。移動も食事も歯みがきも、大変な重労働です。私も60歳になってすぐヘルニアを発症し、無理がきかなくなってしまって…」
いまだに「家族の面倒を他人に見てもらうのは心苦しい」という人も少なくないのだが、このようなケースこそ介護サービスを頼りにしたいものだ。対象となるサービスであれば負担は1~3割なので、利用のハードルは高くないといえる。
「あまりに大変なので、ヘルパーさんをお願いすることになったのですが、訪問を受けて驚きました。だって、私と同世代か、下手したらもっと高齢の小柄な女性なのですよ! あの大柄な義母をお願いして、本当に大丈夫なのかしらと…」
就労希望の高齢者の受け皿になるも、給与が低すぎて…
老後資金形成を促す政府からの働きかけで「働ける限り働く」という社会の潮流ができつつあるなか、介護業界はまさに「就労希望の高齢者」の受け入れ先となっている。
だが、上述の『令和4年度介護労働実態調査』によると、介護職員の月収は「20万~25万円未満」が26.0%、「15万~20万円未満」が19.7%で、平均月収は21万4,501円だ。職種別の平均月収は「無期雇用職員」が22万4,533円、「訪問介護員」が18万8,435円、「サービス提供責任者」が24万3,312円、「介護職員」が20万5,898円、「介護支援専門員」が24万5,070円。
一方で、全労働者(男女計、学歴計)の平均月収(所定内給与)は31.18万円(厚生労働省)。
これを比較すると、介護職の厳しさがわかるのではないだろうか。
今後、介護サービスのニーズはますます高まっていく。しかし「重労働の低収入」という現状がある限り、需要を満たすだけの就労者が集まるとは考えにくい。介護問題に直面している人たちを助けるには、まずは介護業界全体の処遇改善が不可欠だといえる。
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