「中国のGDPが日本の3倍なら、中国の経済規模は日本の3倍。では、中国の人口が日本の9倍なら…」経済指標の読み方の超キホン

「中国のGDPが日本の3倍なら、中国の経済規模は日本の3倍。では、中国の人口が日本の9倍なら…」経済指標の読み方の超キホン
(※写真はイメージです/PIXTA)

経済ニュースで頻繁に目にする経済統計の指標ですが、もちろん、ビジネスの現場でも欠かすことができないものです。本記事では、GDPとその数字の読み方について見ていきましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

GDP統計の作り方は3通り…いずれも同じ結果になる

GDP統計は国内総生産と呼ばれ、一国の経済力を示す統計です。統計の作り方は3通りあり、下記の3つの側面からみた額でそれぞれ作成します。統計上の誤差がなければ、3通りの結果は同じになるはずです。

 

★生産(付加価値)

★分配(所得)

★支出(需要)

 

第一の作り方は、物(財およびサービス、以下同様)を作った企業に自分で付け加えた価値(付加価値と呼びます)額を聞くことです(生産)

 

「部品会社」が30万円の部品を作り、「自動車会社」がそれを仕入れて100万円の自動車を作り、「自動車販売会社」がそれを120万円で売ったとします。

 

部品会社は30万円分の価値を生み出しています。自動車会社は100万円の自動車を作ったけれど、付加価値は100万円から「30万円」を差し引いた「70万円分」です。自動車販売会社は、自分では何も作り出していませんが、ショールームを作りパンフレットを配って販売員が客に説明することで、100万円で仕入れた自動車を120万円で売ることができたわけですから、「20万円」分の価値を生み出したと考えます。

 

3社の付加価値を合計した120万円がこの国のGDPだ、というわけですが、これは消費者に聞いても求めることができます(支出)。「作られた物」と「買われた物」は原則として同じだからです。もちろん、売れ残った物などは調整しますし、輸出された分などについては税関に聞いて足したり引いたりします。

 

もうひとつは、企業に利益を聞き、労働者に賃金を聞く方法です(分配)。企業の売上から仕入れと賃金を差し引いた残りが利益なので、利益と賃金を足せば売上マイナス仕入れ、すなわち付加価値が求められる、というわけです。

経済成長率の「名目」と「実質」からわかること

GDP統計は、各国の経済力を比較する際に使われます。各国は異なった通貨を使っているので、それを米ドル建てに換算した上で比較するのが普通です。米ドルは世界中の貿易や投資で使われている「基軸通貨」なので、経済規模の国際比較の際にもこれを用いる、というわけですね。

 

たとえば、中国のGDPが日本の3倍なら、中国の経済規模は日本の3倍だということになり、世界経済における重要性も、日本の3倍程度だろうと推測されます。一方で、中国の人口が日本の9倍だとすれば、中国の1人当たりGDPは日本の3分の1ということになりますから、中国人の生活レベルは日本の3分の1程度だ、とイメージすることができるでしょう。

 

GDPは、過去の自国の経済規模と比べて経済が成長しているか否かを判断する際にも使われます。GDPを昨年のGDPと比較して、増え方を計算した割り算の結果が「経済成長率」です。単純に割り算をした結果を「名目経済成長率」と呼び、名目経済成長率から物価上昇率を差し引いた値を「実質経済成長率」と呼びます。

 

名目経済成長率が高くても、物価上昇率も同様に高ければ、企業の生産量は増えておらず、経済の実態は変わらないので、実質経済成長率のほうが「経済が成長している」というイメージですね。そこで、単に成長率と記してある場合は実質経済成長率を意味する場合が多く、本稿もそうなっています。

「成長率が高い=景気回復中」と読めるワケ

長期的な経済成長率が高いということは、国民の生活レベルが毎年大幅に向上するということですから、大変望ましいといえます。

 

日本は高度成長期に平均して毎年10%近い経済成長をしていましたから、国民生活は急激に豊かになっていきました。一方で、バブル崩壊後の長期低迷期には、おおむねゼロ成長が続いたので、国民生活のレベルはほとんど上がりませんでした。

 

経済が成長するためには、需要(買い注文)と供給(売り注文)がバランスよく伸びていく必要があります。高度成長期には工場を建てたい企業や、給料が上がったからテレビを買いたいと考える消費者などが増えた一方で、農村にはトラクターが、都市の洋服工場にはミシンが来たことで、労働者1人当たりの生産量が急激に増加したため、高度成長が可能だったのです。

 

一方、バブル崩壊後は需要が伸びなかったため、企業は生産を増やしても仕方ないと考えて生産を絞ったことで低成長となり、企業が雇用を減らしたことで失業が問題となりました。

 

最近では、少子高齢化による労働力不足の影響で、せっかく需要が伸びても企業が労働力不足で生産を増やせず経済が成長できない、といったことも起きていますが、より重要なのは、すでに農家が全員トラクターを持っているため、最新式のトラクターに買い替えたとしても、労働者ひとり当たりの生産量はそれほど増えない、ということでしょう。

 

以上、長期的な成長率について論じてきましたが、短期の経済成長率も景気を考える上で極めて重要です。

 

今年の成長率が高いということは、昨年より多くの物が生産されたわけですから、さぞかし物が売れたのだろうし、企業は儲かっているだろうし、労働者を大勢雇っただろうから失業率も下がっただろう。つまり、景気は回復しているのだろう…と想像できるわけです反対に、成長率が低いときには景気が悪化しているのだろう、と想像できるのです。

 

景気の予想屋は「景気はそこそこよさそうだ」といった予想をする代わりに「経済成長率は〇%程度になりそうだ」といった予想をします。プロ同志の会話では、成長率の予想を語り合うほうがイメージのすり合わせを正確に行なえるからです。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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