(※写真はイメージです/PIXTA)

エジプトのピラミッドに広大なサバンナ……アフリカと聞くとさまざまなイメージが思い浮かびます。しかし19世紀の世界では、アフリカはヨーロッパ側の一方的な価値観で「暗黒大陸」と呼ばれていたと、『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者である河合塾講師の平尾雅規氏はいいます。いったいなぜなのか、みていきましょう。

「暗黒大陸」と呼ばれたアフリカ進出のはじまり

かつてのアフリカは、「キリスト教文明が浸透していない」というヨーロッパからの一方的な価値観に基づき「暗黒大陸」と呼ばれていました。

 

伝染病マラリアの特効薬の開発や、先ほど述べた列強の帝国主義的欲求もあって、リヴィングストンスタンリーといった探検家が大陸の奥深くへと足を踏み入れました。

 

ベルギー国王レオポルド2世は、支援したスタンリーが踏査したコンゴの領有を宣言。イギリスなどが「抜け駆けはずるい!」と反発したため、ベルリン=コンゴ会議が開かれ、アフリカ分割の原則(先占権※1実効支配※2)が確立しました。

※1 いわば、早い者勝ち

※2 現地に行政・治安機構をつくる

 

ここからヨーイ、ドン! でアフリカ分割競争が激化していきます。

 

そのアフリカ分割の軸となるのが「イギリスの縦断政策VSフランスの横断政策」という構図です。まずはイギリスから見ていきます。

イギリスのアフリカ進出

イギリスにとって一番大切な植民地はインドで、インドへ向かうアフリカ大陸廻りのルートでは、アフリカ南端のケープ植民地が重要な中継点でした。地中海からスエズ地峡を徒歩で渡り、紅海を抜けるというもう一つのルートは、距離ではケープ植民地ルートより短いものの、船を乗り換えなければいけないのがネック。

 

これが、1869年にスエズ運河が開通したことで状況は一変!

※ インド航路が距離にして約8,000キロ短縮

 

スエズ運河建設を主導したのはフランスで、エジプトと共同で運河経営にあたりました。

 

しかしエジプト政府は近代化や運河建設で膨らんだ債務に苦しみ、ついに運河会社の株式を売却して借金返済にあてることを検討。これを知った英首相ディズレーリはロスチャイルド家の融資をうけ、議会を通さずに電光石火で株式を買収し、運河を支配下に置きました。

※ ユダヤ系の国際金融一族

 

スエズ運河があるエジプトとケープ植民地、この新旧の拠点を縦に結ぶのがイギリスのコンセプトです。

 

エジプトから南下するルートでは、エジプトの軍人ウラービー、スーダンのマフディー運動に直面。前者を鎮圧したイギリスはエジプトを事実上保護国化しました。

※ エジプトは形式上はオスマン帝国領

 

続いてケープ植民地から北上するルートですが、イギリスはウィーン議定書でこのインド航路の拠点を抜かりなく獲得。もとはオランダ領でしたからオランダ系の白人ブール人が多く、彼らはイギリス支配を嫌い北方にトランスヴァール共和国オレンジ自由国を建てました。

 

スエズ運河の方が注目されるにつれ、ケープ地方の存在感も薄れるよな……と思いきや、なんとトランスヴァール共和国で鉱、オレンジ自由国でダイヤモンド鉱が発見され、アフリカ南部に再び熱い眼差しが向けられました。

 

ブール人国家に対するイギリスの帝国主義的野心は南アフリカ戦争でむき出しになり、ついには両国を征服しました。ただ、イギリスが大苦戦を強いられたことは、極東政策に多大な影響を与えることに……。

 

この苦戦もあり、戦後のイギリスは雇用や土地取得の際にブール人を(黒人よりも)優遇してなだめすかそうとしました。これが南アフリカ連邦における悪名高いアパルトヘイトの端緒です。

 

 

平尾 雅規

河合塾

世界史科講師

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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