画像:PIXTA

シアトルのガレージで働く小さなチームを世界最大の企業へと急成長させたアマゾン創業者ジェフ・ベゾス。部下を鼓舞、経営陣を説得、オンラインミーティング、大人数のプレゼンなど、彼はコミュニケーションスキルを特に重視し、徹底的に磨いてきた。そのスキルは、今もなお社内外で波及し続けている。本連載は、ハーバード大学デザイン大学院の上級リーダーシップ・プログラムで企業エグゼクティブ向けにコミュニケーションスキルを教える、コミュニケーション・アドバイザーのカーマイン・ガロ氏の著書『Amazon創業者ジェフ・ベゾスのお金を生み出す伝え方』(文響社)より、一部抜粋して紹介する。

ジャーナリストがゴミコンテナから偶然見つけた「1行のログライン」

ジャーナリストのブラッド・ストーンが、ゴミコンテナを漁って偶然見つけた1行のログラインで、ベゾスはそのことを簡潔に説明している。

 

2003年、ニューズウィーク誌のジャーナリストだったストーンは、ベゾスが新しく立ち上げた宇宙企業で何を計画しているのかを探るべく、昔ながらのやり方で取材調査を行った。まずストーンは、ブルー・オペレーションズLLCという、シアトルのアマゾン本社と同じ住所を持つ事業体の登記情報を発見した。この会社について調べていくうちに、情報がほとんど掲載されていないウェブサイトを見つけ、航空宇宙エンジニアを募集していることを知った。

 

このニュースをいち早くものにしようと決意したストーンは、シアトル南部の工業地帯に車を走らせ、書類に書かれていたもうひとつの住所を訪ねた。するとそこに建っていたのは、5万3000平方フィート(約4924平方メートル)規模の倉庫だった。ドアには「BLUE ORIGIN」と書かれていた。

 

週末の夜遅い時間である。窓からのぞいても、何も見えなかった。1時間ほど車の中で待ったが、何も起こらない。ついにストーンは通りを渡ってゴミコンテナまで行き、そこからできるだけたくさんのものを車のトランクに運びこむことにした。

 

そして、ゴミを精査しているうちに出てきたのだ。ベゾスがブルーオリジンの最初のミッションを文字にした、コーヒーのシミがついた紙が。

 

To create an enduring human presence in space.

 

宇宙での人類の永続的なプレゼンスを実現するために。

 

たとえ世界一素晴らしいアイデアを持っていたとしても、それを明確で簡潔、かつ具体的な1文で表現できなければ、誰からも注目されないのだ。

Amazon創業者ジェフ・ベゾスのお金を生み出す伝え方

Amazon創業者ジェフ・ベゾスのお金を生み出す伝え方

カーマイン・ガロ【著】、鈴木ファストアーベント理恵【訳】

文響社

学問を挫折した男はコミュニケーションをどのように磨いて世界一のお金持ちになったのか? 部下を鼓舞、経営陣を説得、オンラインミーティング、大人数のプレゼンなど ベゾスをはじめ、スティーブジョブス、ウォーレンバフ…

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