ブループリントがなければ何も始まらない
私カーマイン・ガロは、ハーバード大学デザイン大学院の上級リーダーシップ・プログラムで、企業エグゼクティブ向けにコミュニケーションスキルを教えている。受講者は皆、構築環境分野のリーダーである。世界中で、壮大な構造物、建造物、さらには都市を丸ごと創造してきた設計者やディベロッパーたちだ。彼らのビジョンは、よりスマートで、健康的で、環境に優しい、つまり、より住みやすい空間を作り出すことである。
カリキュラムの中で、コミュニケーションスキルのトレーニングは、重要な部分を占める。投資家や利害関係者、コミュニティの住民に自分たちのアイデアを売りこむことができなければ、何かを建設することなどまず不可能だからだ。
設計者のビジョンを、他の人がそれにしたがってアイデアを実行に移すことのできる詳細なモデルに変換したものがブループリントである。建設プロセスに関わるすべての人の認識をひとつにするための計画書としての役割を果たす。
加えて、ブループリントには拡張性があるため、設計者がその場に立ち会わずとも、エンジニア、請負業者、作業員がビジョンを現実のものにしていくことができる。ビジョンがどれほど壮大であっても、ブループリントがなければ何も始まらない。
慈善事業と宇宙開発への情熱を追い求めたいという理由から、ベゾスは2021年にアマゾンCEOのポジションから退き、その後任にはアンディ・ジャシーが就いた。しかし、ベゾスが作り上げたコミュニケーションのブループリントは、同社のあらゆる部門で社員やリーダーのためのモデルとして機能し続けている。
アマゾンの幹部たちは今でも、ベゾスが年におよぶ在任期間中にスピーチやインタビュー、プレゼンテーションを通して一貫して用いたのと同じ言葉を使い、同じ原則を説いているのだ。
また、ベゾスがアマゾンで先駆的に構築したコミュニケーション戦略は、同社が残してきた巨大な足跡の範囲をはるかに超えて波及している。
「アメリカのCEO生産工場」として知られるアマゾンは、多数の起業家を輩出しており、あなたも日々の生活を通してその多くに触れているだろう。
彼らは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が、 「ジェフ・ベゾスのビジネスの福音を経済界に広めるアマゾン卒業生のディアスポラ[訳注:もともとは故地から世界中へ離散したユダヤ人を指す]」と呼ぶ人々の一部となっているのだ。