「2年でアメリカ100年分のセメント」消費した中国…「不動産バブル崩壊」で予測される“最悪の未来”【経済の専門家が警鐘】

「2年でアメリカ100年分のセメント」消費した中国…「不動産バブル崩壊」で予測される“最悪の未来”【経済の専門家が警鐘】
(※写真はイメージです/PIXTA)

中国不動産バブルの崩壊による世界経済への影響が懸念されています。日本でも約30年前にバブル崩壊が起き、その影響は現在も残っているといえるでしょう。しかし、中国の不動産バブル崩壊は、日本よりもさらに深刻なシナリオが待ち受けていると、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は警鐘を鳴らします。中国バブル崩壊の現状と、今後予想される“最悪の未来”について、詳しくみていきましょう。

中国は「日本化」するか

中国は固定資本形成のGDP比40%超という歴史上例のない「投資主導経済」を20年にわたって続けてきた(図表8)。

 

出所:OECD、MF、ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表8]主要国総固定資本形成対GDP比(名目) 出所:OECD、MF、ブルームバーグ、武者リサーチ

 

この投資主導経済の実態はコスト先送りによる需要創造である。投資とは会計的には支出し(=需要を創造し)、コストを資産計上によって先送りするという危険な行為である。建設された設備や構築物が有効に活用できないものであれば、不良資産の山を作り続けることになり、非常に大きなリスクを伴う。共産党主導の地方政府は、そのリスクに無頓着で、成長競争のみにこだわる投資暴走を続けてきたのだ。

 

2年余りでアメリカ100年分のセメントを消費したといわれるほどの天文学的投資資産の多くが、価値を生み出す健全資産とは考えられず、潜在的不良資産が積み上がっていると推測される。

 

固定資産投資による経済成長を続けてこられた背景には、土地の錬金術があった。地方政府が土地利用権を売り、その売却代金が地方政府の収益の四割を占めたことで、地方政府は極めて収入が潤沢になった。

 

そうした潤沢な資金をインフラ投資やハイテク企業への支援に向けることができた。この成長パターンは、バブルが崩壊し、地方政府による土地利用権売却収入が止まると維持できなくなる。そして、いまその崩壊が実際に始まったのである(図表9)。

 

出所:日本総研
[図表9]地方政府土地売却収入と総歳入比(日本総研) 出所:日本総研

 

投資とは逆に、過去40年間に消費対GDP比は53%から38%へと15%低下し、消費が投資を下回り続けたことも異例である(図表10)。

 

出所:世界銀行、武者リサーチ
[図表10]主要国家計支出対GDP比(名目) 出所:世界銀行、武者リサーチ

 

今後予想される投資の落ち込みは消費の増加でカバーするしかないが、バブル崩壊と習近平政権の奢侈を非難するイデオロギーは、家計の防衛的貯蓄の引き上げに結び付き、一段と経済活力を奪っていくことが想定される。

 

短期的困難を、①バブル崩壊の先送り、不良債権の隠ぺい、追い貸しなどの弥縫策、②家計に対する減税などの消費支援で、糊塗するだろうがその効果は短命であろう。中国の困難はかつて日本が陥ったバランスシート不況とは異なる。

 

日本のBS不況は、資産価格下落による金融上の損失の発生であり、時間をかけてその処理が完遂された。しかし中国の根本問題は、実物資産の作り過ぎ、過剰住宅・過剰設備・過剰インフラにある。そこからの脱却は実物経済の急収縮をもたらす。深刻な大恐慌型の経済困難がありえる。

 

ということは、中国が日本化(Japanification)するかどうか、という問いは甘すぎる。より深刻な将来が待っていることを念頭に置くべきである。

 

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武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年9月4日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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