(※写真はイメージです/PIXTA)

年金を繰り下げて受給すると、1ヵ月あたり0.7%増額された年金を受け取ることができます。しかし、場合によっては「受給額の一部減額」または「全額受給できなくなる」ことがあると、牧野FP事務所の牧野寿和CFPはいいます。「もらえるはずだった年金がもらえなくなる」という悲劇を起こさないためにも、年金制度について事例を交えてみていきましょう。

在職老齢年金とは

厚生年金の加入年齢は70歳未満です。それまで保険料を納付して厚生年金に加入している人や、70歳以上の人でも、会社員など厚生年金保険の適用事業所に勤めている場合、加給年金を除く老齢厚生年金の受給月額(基本月額)と、勤務先の給与や賞与を12等分した額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止になります。これが在職老齢年金制度です。

 

<在職老齢年金による調整後の年金支給月額の計算式>
  • 基本月額と総報酬月額相当額との合計が48万円以下の場合 :全額支給
  • 基本月額と総報酬月額相当額との合計が48万円を超える場合:在職老齢年金による調整後の年金支給月額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)÷2

 

繰下げ受給も在職老齢年金の対象…月収48万円を超えると減額に

在職老齢年金の制度は、繰下げ受給する年金にも適用されます。しかし、Sさんはこのことは社労士が教えてくれるまで知らず、75歳まで繰り下げて受給したときの受給額を毎月2万円ずつ多く計算していました。

 

筆者が作成
[図表2]Sさんが75歳まで繰り下げた年金受給見込額出所:筆者が作成

 

出典:「日本年金機構HP」
[図表3]在職老齢年金制度により支給停止される額 出典:「日本年金機構HP」

 

なお[図表2]は、Sさん65歳時点の役員報酬と厚生年金受給額で計算しています。実際にはSさんは75歳まで勤める予定なので、繰下げによる増額分は繰下げ加算額に平均支給率を乗じて算出しました([図表3]を参照)。

※平均支給率=月単位での支給率の合計÷繰下げ待機期間

 月単位での支給率=1-(在職支給停止額÷65歳時の老齢厚生年金額)

 

65歳から受給した場合の年金受給額

参考までに、Sさんが本来の65歳から受け取り始めた場合の年金受給額を記載します。

 

出所:筆者が作成
[図表4]年収による年金受給額の比較 出所:筆者が作成

繰下げ受給すると加給年金“約400万円”が受給できない

加給年金とは、20年以上厚生年金に加入した方が、65歳から年金を受給するとき、扶養する配偶者が65歳になり自分の年金を受給するまで、また子供は18歳で高校を卒業する3月末日まで加算される年金のことです。

 

加給年金は、老齢厚生年金といっしょに受給しますが、繰り下げての受給はできません。したがって、Sさんのように年金を75歳まで10年間繰り下げて受給すると、加給年金の受給額397,500円(令和5年度の額)×10年間=3,975,000円、約400万円受給できなくなるのです。

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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