悪化する健康保険組合の財政
健康保険組合連合会(健保連)が公表した2022年度の決算見込みによると、全体では1,365億円の黒字となるものの、組合の4割(559組合)が赤字となっています。
2022年度は、2021年度と比べて保険給付費が増加しています。つまり、医療費等の組合員の自己負担額を超えた分として健康保険組合から支払われた金額が、前年度と比べて増加しているということです。そうであるにもかかわらず全体として「黒字」となった要因は、「高齢者拠出金」がマイナス2,458億円(6.7%)と大きく減少したからです([図表1]参照)。
健保連は、この高齢者拠出金の減少は、2020年から新型コロナ感染拡大に伴い、高齢者医療費が減少していたことによる一時的なものだとしています。そして、2023年度は高齢者拠出金が2022年度よりもプラス2,500億円(7.2%)と急激に増加し、かつ、保険給付も増加する見込みであることから、収支は3,600億円の赤字になると推測しているのです。
高齢者拠出金とは
では、高齢者拠出金とはどのようなものでしょうか。前提として、後期高齢者医療制度について知っておく必要があります。
後期高齢者医療制度は、75歳以上の後期高齢者等について、医療費の自己負担額を原則として1割とする制度です。自己負担額以外の額は、公費(約5割)と、現役世代が加入している健康保険からの支援(約4割)でまかなうことになっています([図表2]参照)。2008年から、健康保険制度とは別個の制度として導入されました。
75歳以上の後期高齢者の多くは、その他の世代の人よりも医療費がかかり、かつ、所得が低くなってしまいます。そこで、医療費の自己負担額を1割に抑え、あとは国と現役世代が支援するということです。この、現役世代の健康保険から後期高齢者医療制度への支援金が「高齢者拠出金」です。