(※画像はイメージです/PIXTA)

全国1,380の企業の健康保険組合で組織する健康保険組合連合会(健保連)は、9月14日、2022年度分の決算見込みと今後の財政見通しを発表しました。これによると、2022年度は黒字となるものの組合の4割が赤字で、かつ、2023年度以降は大幅な赤字が見込まれ、危機的な財政状況がうかがわれます。その大きな原因として挙げられているのが「高齢者拠出金」の増加です。高齢者拠出金とは何なのか、解説します。

高齢者拠出金は今後も負担増が見込まれる

2023年分の健保組合の決算推計によると、経常収入8兆7,700 億円に対し、経常支出合計が9兆1,300億円でそのうち高齢者拠出金が3兆6,500億円(約40%)を占める予測となっています。赤字の推計額は3,600億円なので、健保組合の財政状況において、高齢者拠出金の負担が重くなっていることがわかります。

 

また、健保連の試算によれば、2023年以降、高齢者拠出金の額は増加していく見通しになっています([図表3]参照)。

 

健康保険連合会「」より
[図表3]高齢者拠出金の動向と今後の見通し 健康保険連合会「令和4年度健保組合決算見込と今後の財政見通しについて」の図表をもとに作成

 

この試算は、最近よくいわれる「2025年問題」とも整合します。すなわち、2025年までには、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になります。団塊の世代は日本の人口のなかで最も高い比率を占めているので、その分だけ後期高齢者の医療費が増加し、それをサポートする高齢者拠出金も増加していくことが予測されるということです。

 

厚生労働省は、高齢者拠出金の負担増大への対策として、2022年10月から、後期高齢者医療制度について、75歳以上で一定以上の所得がある人の自己負担割合を2割へと引き上げています(現役並み所得者はそれ以前から3割です)。厚生労働省の推計によれば、2割負担となる後期高齢者の割合は約20%とのことです。しかし、この措置にもかかわらず、先ほどの健保連の試算では高齢者拠出金が増加していくことになっています。つまり、健康保険組合の財政はより一層苦しくなっていくことが予測されます。

 

今後、健康保険制度と後期高齢者医療制度の関係をどうするかということや、不足分の財源をどのようにまかなうのかということが、重要な政策課題になっていくものと考えられます。

 

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