(※写真はイメージです/PIXTA)

ドラマや映画でも有名な、ペリーによる「黒船来航」(1853年)。これにより鎖国が終わり、近代日本へと向かっていったことはなんとなくわかってはいても、この背景や詳しい中身についてはあまり知らないという人も多いのではないでしょうか。今回は、有名予備校講師で『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)著者の山中裕典氏が、1840~50年代の開国が日本にもたらした影響について解説します。

「対欧米貿易」の開始から「尊王攘夷運動」へ

国内産業への影響

1859年に始まった対欧米貿易は、開港場の居留地で取引する形態で(横浜での取引が他を圧倒)、イギリスが相手国の中心となり(アメリカは国内を二分した南北戦争[1861~65]が展開した時期)、全体として輸出超過でした。

 

輸出品は生糸が中心で(日本は室町時代から中国産生糸の輸入国だったが、江戸時代中期以降に生糸の国産化が進んだ)、蚕[かいこ]の繭[まゆ]から生糸をつくる製糸業は、輸出に伴う生産増でマニュファクチュア(工場制手工業)が進展しました。

 

しかし、生糸から絹織物をつくる絹織物業は、原料の生糸が不足して衰退しました。また、輸入品は毛織物綿織物が中心で、いち早く産業革命が進展したイギリスの綿製品との競争に負け、国内の綿織物業や、綿糸の原料の綿花を栽培する綿作[めんさく]は衰えました。

 

こうして、輸出産業の中心となった製糸業の発展と、衰退した綿産業の回復が、明治期以降の殖産興業の目標となりました

 

国内社会への影響

農村の在郷商人[ざいごうしょうにん]は、江戸の問屋商人[といやしょうにん](同業組合の株仲間[かぶなかま]を結成)を通さず、開港場の横浜へ輸出品を直送しました。

 

品不足での物価上昇を抑え、株仲間を通した流通統制を維持するため、幕府は五品江戸廻送令[ごひんえどかいそうれい](1860)で、生糸などの江戸経由を命じましたが、効果は上がりませんでした。

 

出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋
[図表5]流通機構 出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋

 

また、金と銀の交換比率(金銀比価[ひか])が、日本では金1:銀5、外国では金1:銀15だったので、大量の金貨が海外へ流出しました。幕府は慌てて万延小判[まんえんこばん]を鋳造しました(1860)。

 

金貨のサイズを3分の1にして、日本の金銀比価を金1/3:銀5、つまり金1:銀15としたので、外国と同じになって金貨の流出は止まりました。しかし、貨幣の額面は同じなのにサイズが3分の1になって貨幣価値が下落し、物価は上昇しました

 

出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋
[図表6]金銀比価(概念図) 出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋

 

物価上昇は庶民の生活を圧迫し、農民の百姓一揆[いっき]や都市下層民による打ちこわしが増加しました。一方、列強の圧力による対外的危機感や開国への不満から、外国人殺傷や公使館襲撃などの攘夷[じょうい]運動が激化しました。

 

こうして、天皇を「王者」として尊ぶ尊王[そんのう]論に、外国排斥を唱える攘夷論が結合した尊王攘夷論は、現実の政治を動かす尊王攘夷運動として高まっていったのです。

 

 

山中 裕典

河合塾/東進ハイスクール・東進衛星予備校

講師

 

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※本連載は、山中裕典氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる日本史

大人の教養 面白いほどわかる日本史

山中 裕典

KADOKAWA

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