為替介入のしくみ
為替介入(外国為替平衡操作)とは、為替相場が急激に変動した場合に、通貨当局が通貨の売買を行い、変動を抑制することをいいます。「円安ドル高」「円高ドル安」のいずれの場合も考えられます。「円安ドル高」のときは「ドル売り・円買い」、「円高ドル安」のときは「円売り・ドル買い」を行います。
昨今は「円安ドル高」が進行しているので、為替介入が行われるとすれば「ドル売り・円買い」ということになります。円安ドル高に対する「ドル売り・円買い」の為替介入は、近年では2022年9月22日と10月21日に行われています。
為替介入の財源は「外貨準備」
ドルを売り、円を買うための財源となる米ドルは「外貨準備」から支出されます。財務省が所管する「外国為替資金特別会計」(外為特会)と、日銀の保有する外貨がこれにあたります。このうち外為特会は、国の一般会計とは区別して財務省によって管理されています。
7日朝に、財務省が8月末日時点での外貨準備高を発表しました。これによれば、外貨準備高は1兆2,511億7,100万ドルです、うち「証券」が9,866億7,500万ドル、「預金」が1,357億1,100万ドルです。その多くが米ドルだとして、為替介入の財源として使える米ドルはおよそ1兆1,000億ドルということになります。もっとも、全額を投入することは現実的ではありません。あくまでも理論上投入できる上限額ということです。
直近2回の為替介入で投入された額と効果
直近2回の為替介入(2022年9月、10月)において、どれくらいの金額が投入され、それによって為替相場の動きにどのような影響があったのか、まとめてみましょう。
2022年9月の為替介入
まず、2022年9月22日の為替介入についてみてみましょう。この日、為替相場は1ドル145円台後半に達しており、「ドル売り・円買い」の為替介入が行われました。財務省が同年11月に発表したところによれば、このときの為替介入の金額は2兆8,382億円です(為替介入についての発表は通常、2ヵ月後に行われます)。
この財源の多くは、外貨準備のなかの米国債券を米ドルに換金したものであると推察されます。どういうことかというと、同年9月末と8月末の外貨準備高(証券と預金)の差額は515億900万ドルで、その大半が米国債券を含む「証券」です([図表1]参照)。
このことからすれば、米国債券を米ドルに換金し、為替介入に充てたものとみられます。
この為替介入の結果として、一時は1ドル=145円台に達していたのが、同日の終値は142円40銭と、円高に押し戻されました。ただし、その後、10月6日には再び1ドル=145円台となり、10月20日には1ドル=150円14銭に達しています。
2022年10月の為替介入
次に、2022年10月の為替介入についてみてみましょう。10月21日、24日と2日に分けて行われています。そして、財務省の発表によると、為替介入の金額は10月21日が5兆6,202億円、24日が7,296億円で、合計6兆3,499億円だったとのことです。
このときも、外貨準備のなかの米国債券が米ドルに換金され、為替介入の財源に充てられたとみられます。すなわち、同年10月末と9月末の外貨準備高(証券と預金)を比較すると、証券が-439億941万ドル、預金が+9億500万ドルです([図表2]参照)。
では、為替介入の結果はどうだったのでしょうか。まず、10月20日に1ドル=150円台だったのが、10月21日、24日の為替介入のあと、下落傾向を見せ、11月11日には138円台へと大幅な円高になりました。それからしばらくは上下を繰り返しながら円高ドル安の傾向が続き、2023年1月13日に1ドル=127.86円になり、これが9月7日時点で過去1年の最高値となっています。これを、為替介入による成果とみることも可能です。
しかし、その後、再び円安ドル高の傾向に転じ、現時点で、前回の為替介入が行われる直前の2022年10月20日の水準(1ドル=150円前後)に近づきつつあります。
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