前回は、将来も収益を生み続ける「よい不動産」を子孫に承継する方法を説明しました。今回は、所有物件の利回りを高める「付加価値サービス」について見ていきます。

「他社では受けられないサービス」を提供できるか?

土地の特徴を踏まえて工夫する貸し方に加えて、サービスを付加することが高利回りを生むケースもあります。

 

建物自体はここ十数年で質が向上しており、平準化が進んでいます。そのため、極端にいえばどんな建物であれ、どこのハウスメーカー、工務店で建てようとも、さほど大きな違いはなくなっています。もし、どこかの不動産会社が他にない工夫のある建物をつくったとしても、インターネットで情報が一瞬のうちに拡散する今の時代にあっては、競合他社がすぐその工夫を真似します。つまり、いくら工夫しても建物での差別化は難しいのが現状なのです。

 

また、もし建物そのもので勝負しようと思っても、収支を考えるとかけられる予算は決まってきます。ゴージャスな建物をつくってもそれだけの家賃が取れるというわけではない状況を考えると、そうした無謀な経営は考えられません。

 

その結果、立地、つまり土地の特徴が物件差別化のポイントになってくるのですが、立地だけでは競合に勝てない場合があります。その際に必要になってくるのが他にない付加価値です。つまり、他社では受けられないサービスがあるかどうかです。

 

建物の工夫は見てすぐに分かるため、あっという間に真似されますが、サービスのように目に見えないものを真似するには時間がかかります。サービス提供にノウハウが必要な場合などは、外形だけ真似してもお客さまに満足を与えられないケースもあります。

 

このように、真似しようと思ってもできないサービスを提供できれば、立地の難点は容易にカバーできます。さらに競合に圧倒的な差をつけることも可能になります。

ウィークリーマンションへの「転用」事例

では、どのようなサービスがあるのでしょう。ここからは土地の特徴に合わせた物件づくりとも合わせた事例を見ていきましょう。

 

【事例 賃貸住宅をウイークリー、マンスリーマンションに転用】

 

収益物件、不動産経営と聞くと、多くの人は一般的な賃貸住宅を想像するはずです。しかし、多様化の進む現在、住まいの借り方やその期間も多様化しています。そのため、物件、立地によって従来とは異なる貸し方で運用したほうが収益が上がる、あるいは空室を解消できるケースがあります。これからご紹介するウイークリー、マンスリーマンションはそうした貸し方の代表例です。

 

 

ウイークリー、マンスリーマンションとは家具・家電など生活に必要な備品を備え付けた、短期貸しの部屋のことです。リノベーションなど出費を伴う転用とは違い、家具・家電類を備え付けるだけで転用できるのが貸す側には大きなメリットです。

 

もちろん、どんな賃貸物件でも転用できるわけではありません。建物の要件としては専有面積で約25㎡以上、1階に備品などを置くスペースが必要ですし、交通の利便性も求められます。筆者の会社の場合、ウイークリー、マンスリーマンションの利用者の平均利用期間は1か月強。それだけの期間、主にビジネスマンが滞在することになりますから、駅から近いなど便利な立地でなければ転用は難しくなります。

 

ただし、実績として駅から遠くても、郊外の会社や工場が近いということで転用できた物件もあります。あきらめずまずは相談してみることをおすすめします。その条件を満たしたうえで運営会社へ一括貸しすれば、ワンルーム以外の間取りでも転用できます。また、空室リスクを抑えて、安定した賃料も見込めます。

本連載は、2015年1月23日刊行の書籍『大増税時代に資産を守る富裕層の不動産活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本書を利用したことによるいかなる損害などについても、著者および幻冬舎グループはその責を負いません。

大増税時代に資産を守る 富裕層の不動産活用術

大増税時代に資産を守る 富裕層の不動産活用術

磯部 悟

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の富裕層のほとんどは土地を所有している地主です。先祖から受け継いだ土地を保有し、それを活用することで資産を守ってきました。ところが土地の値下がりや固定資産税の上昇、そして相続税により多くの富裕層が危機に立た…

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