前回は、相続財産を減らすだけではない「病院の法人化」のメリットを解説しました。今回は、所得が4000万円に届いたら病院の法人化を検討すべき理由を見ていきます。

収入が多いとキャッシュがたまり、相続財産が膨らむ

【テクニック3】

個人開業で所得が多い人は病院を法人化する

 

開業医のなかには病院を法人化していない人もいるでしょう。個人開業の場合は、病院の利益がそのまま開業医の収入になります。そして、所得の額に応じて所得税を支払います。

 

もし、病院の利益が大きい(開業医の所得が大きい)のであれば、法人化することをおすすめします。そのほうがメリットが大きいからです。

 

まず、収入が多いと、どんどんキャッシュがたまっていき、相続財産を膨らませてしまいます。法人化して、法人から役員報酬をもらう形にすれば、報酬額を自分で決めることができます。所得が多くなりすぎないようにコントロールし、所得税の負担を減らせばいいのです。

 

法人は利益に応じて法人税を支払うことになりますが、基本的に所得税よりも負担額は少なくなります。法人税と所得税の税率表の通り、900万円を超えるあたりから法人税のほうが税率は低くなります。法人税は最高税率が23.4%であるのに対し、所得税は45%にもなるのです。

 

【図表1 医療法人の法人税の税率】

 

【図表2 所得税の税率】

 

日本の法人税は諸外国に比べて高めになっており、企業に国際競争力をつける目的で、国は法人税を引き下げる方向性を打ち出し続けています。平成28年度にも引き下げられたばかりですが、今後さらに引き下げられる可能性も高いといわれています。

 

単純に「所得が何円以上なら法人化したほうが得になる」とはいえませんが、ざっくりとしたラインでいえば、4000万円以上の所得のある個人開業医の場合は、法人化を検討する価値はあるでしょう。

法人にすれば多額の保険料控除や経費扱いも可能に

もう一つ、法人化すると、いろいろなものを経費扱いにしやすいというメリットもあります。

 

たとえば保険料です。個人の場合、保険料の控除額には限度があります。保険料が100万円でも控除は限度額までです。

 

これに対して、法人になると保険料の全額もしくは1/2、1/3、1/4が経費として認められます。全額か1/2か1/3か1/4かは保険商品によりますが、保険料自体には上限はありません。資金繰りが可能なら1億円でも10億円でも加入でき、その全額もしくは一部を経費にできるのです。

本連載は、2016年5月27日刊行の書籍『相続破産を防ぐ医師一家の生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

井元 章二

幻冬舎メディアコンサルティング

医師一家の相続は、破産・病院消滅の危険と隣り合わせ 今すぐ準備を始めないと手遅れになる! 換金できない出資持分にかかる莫大な相続税 個人所有と医療法人所有が入り乱れる複雑な資産構成 医師の子と非医師の子への遺…

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