(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代といわれる昨今。60歳で定年を迎えるとすると、残りは40年。セカンドライフはゆっくり過ごす、再雇用で働く、起業するなど、どのような選択をするかという点は悩みどころです。本記事では、Sさんの事例とともに、失敗しないためのセカンドライフの考え方について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の代表の三藤桂子氏が解説します。

40年あるセカンドライフ…定年後に「起業する人」が増加

日本の平均寿命も伸び、定年後も働き続けたいと希望する人が増え、企業側は60歳定年であっても、労働者が希望すれば、65歳まで働き続けることができるようになりました。2021年4月から施行された高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)では70歳までの就業機会の確保について、会社は多様な選択肢を講ずることが努力義務となっています。

 

定年後の働き方は、キャリアを活かして、次の働き方として起業を選択する人が増えています。下図は2017年中小企業白書の「男女別に見た、起業希望者・起業準備者の年齢構成」です。
 

【図表】2017年中小企業白書「男女別に見た、起業希望者・起業準備者の年齢構成」
[図表]2017年中小企業白書「男女別に見た、起業希望者・起業準備者の年齢構成」

 

起業に関心を持った主なきっかけとしては、男女で差異があるものの、「時間的余裕ができた」「収入を得る必要があった」「周囲の起業家・経営者 の影響」「家庭環境の変化(結婚・出産・介護等)」などがあげられています(順不同)。

 

人生100年時代といわれるように、定年が60歳とするならば、セカンドライフは40年あります。今回は同級生で現役時代は共働きのSさん夫婦は、セカンドライフでは2人の共通の趣味を活かした起業を決断しました。しかしながら、起業から半年を過ぎたころ、夫婦のすれ違いが生じるようになり最終的には離婚騒動にまで事態は深刻化します。

 

いったいなにがあったのでしょうか。

共働きにより年金は月30万円、退職金と貯金は5,000万円

製薬会社で研究職として勤めていたSさんは大のラーメン好き。現役時代、数々の店に足を運びラーメンの味を研究。休日には自宅で出汁からラーメンを作るほどです。次第に「いつかは自分のお店を持ちたい」――そんな夢を持つようになりました。

 

Sさんの妻は麺類好きです。特別好きなのはやはりラーメン。なかでも夫の作るラーメンが世界で一番好きだったそうです。そんな気の合う2人。妻も夫の考えに賛同し自宅の一部を改装、ラーメン店を始めることにしました。

 

妻は大手デパート販売員の仕事を定年まで続け退職したため、退職金が予想以上に受け取れました。Sさん夫婦の退職金と貯金は2人合わせて約5,000万円、65歳から受け取れる公的年金は夫婦で月額30万円です。

 

<Sさん夫婦の65歳から受け取る公的年金額>
老齢基礎年金:夫 79万5,000円(2023年度 新規裁定者満額)
       妻 79万5,000円
老齢厚生年金:夫 56万円×5.481÷1,000×450月=138万1,212円
       妻 41万円×5.481÷1,000×300月=67万4,163円
合計:364万5,375円/年(月額30万3,781円)
※加給年金、差額加算は考慮せず

 

公益財団法人生命保険文化センター、2022(令和4)年度 生活保障に関する調査(速報版)という調査結果では、夫婦2人の老後の最低日常生活費は月額23.2万円、ゆとりある老後生活費は月額37.9万円となっています。

 

上記より、Sさん夫婦は、日常生活は年金で賄うことができ、貯金も含めて老後の備えとして不安はなく、いわゆる勝ち組夫婦といえるでしょう。

 

貯金の一部はラーメン店の開店に向けての準備資金と自宅のリフォーム、住宅ローンの繰上げ返済に使い、合計で2,000万円ほどかかりました。
 

 

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