1―はじめに
ドイツ最大の保険グループであるアリアンツは、2033年までの世界保険市場見通しについて、5月17日付で公表した1。
同社は毎年、この時期に世界各国の10年後の保険市場見通しを公表しており、一昨年(2021年5月)は、2021年からの10年間は、世界の保険市場は「黄金の10年間」と位置付けていたが、2022年に入ってからのロシアのウクライナ侵攻、世界的なインフレの進行等を受け、政治・経済における不確実性が高まっている。
そういった中、同社は今後の保険市場についてどう予想しているのか、同社が公表したデータを用いて、見ていきたい。
1 Allianz Global Insurance Report2023 Anchor in turbulent times(2023年5月17日)(以下、Allianz Global Insurance Report2023)。
2―2022年の世界保険市場の状況
Allianz Global Insurance Report(2021,2022,2023)によれば、2022年の世界の保険料収入の増加率は、前年比4.9%であり、生損保別では、生保2.4%、損保8.7%となった(図表1)2。
生保、損保ともに増加したが、2022年の全世界のインフレ率が8.7%3であることを考えれば、生保は実質的には伸びておらず、停滞しているといえよう。
過去2年と比較してみると、2020年は、主に新型コロナウイルスの影響により、合計保険料では、対前年減少したが、2021年には回復した。それ以降も好調が続くことが予想されたが、ロシアのウクライナ侵攻を機に状況は一変した。
インフレによる家計消費の圧迫等に伴い、2022年の生保の対前年増加率は前年より減少、生損保合計の増加率も2021年より若干減少することとなった。
なお、図表はないが、2021年度は、米国(生保8.8%、損保9.7%)が堅調だった一方で、アジア(生保0.9%、損保1.1%)、中国(生保▲1.7%、損保▲1.7%)は低かったところ、2022年度は、アジア(生保3.6%、損保8.4%)、中国(生保3.9%、損保6.6%)ともに回復している。
(図表2)4は、2022年収入保険料における生損保別の地域別構成比を示したものであるが、生保と損保では、地域別の構成比も大きく異なっている。生保に占めるアジアの占率は高く、中国、日本を含めたアジア合計で36.3%に達している。
一方、損保は、北米が半分近くを占めており圧倒的である。アジア合計は22.3%で、初めて西欧(22.0%)を上回ったが5、全体に占める割合は、生保(36.3%)に比べると小さい。